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展覧会と本と韓国ドラマと時々K-POPかな・・・。

by 梅子

ニュートンと贋金づくり

ニュートンと贋金づくり_f0149664_19553352.jpgニュートンと贋金づくり
天才科学者が追った世紀の大犯罪

トマス・レヴェンソン著
寺西のぶ子訳

欧州最高の知性 vs. 英国最悪の知能犯
万有引力を発見し、近代物理学に巨大な足跡を残した天才科学者ニュートン。後年は王立造幣局に長官として迎えられ、イギリスの貨幣政策に多大な貢献をしたことが知られていますが、それと同じ時期に、ある一人の贋金づくりと熾烈な頭脳戦を繰り広げていたことは、これまでほとんど語られてきませんでした。その贋金づくりの名は、ウィリアム・チャロナー。イギリス史上類を見ない巨額の贋金事件の首謀者です。
本書は、膨大な資料と綿密な分析をもとに、ニュートンの捜査官としての知られざる一面に初めてスポットを当て、事件解決にいたる攻防をスリリングに描いたノンフィクションです。天才科学者はいかにして世紀の大悪党を追ったのか……ぜひ本書をご一読ください。


事実をもとにした物語だと思って読み始めましたが、ノンフィクションでした。タイトルにある贋金事件だけでなく、ニュートン自身の魅力にも迫り面白かったです。私の中ではリンゴの木の横に立っているイラストのイメージだったのですが、生身の魅力溢れる人物として生まれ変わりました。そもそもニュートンについて無知すぎました。こんなにも多くの功績を残した人物だったとは驚きです。しかも、大天才の割りに、偏った才能ではなく、何でもできちゃう万能の人なんですから、そりゃ万有引力の発見なんて朝飯前って感じなのかもしれません。それは言いすぎって?いえいえ、スーパーコンピュータ並みの計算を、生身の人間がやっちゃたんですから言い過ぎではないでしょう。そして、贋金事件の首謀者との対決後、ニュートン晩年まで、楽しませてくれます。いやはや、ニュートンが好きになっちゃう1冊でした。
# by umekononikki | 2013-03-23 19:56 |

ミスター・ピップ

ミスター・ピップ_f0149664_22574341.jpgミスター・ピップ
ロイド ジョーンズ 著
大友 りお 訳

舞台は1990年初頭、ブーゲンヴィル島がパプア・ニューギニア政府によって封鎖された三年間。島の唯一の白人ミスター・ワッツが、ディケンズの小説『大いなる遺産』を子どもたちに一章ずつ朗読するところから物語は始まる。子どもたちは作品に描かれた英国社会に最初はとまどうが、次第に主人公の孤児ピップが本当に生きているように感じはじめ、村に近づく独立抗争の暗い影におびえつつも、ピップの世界で想像をふくらませる。
初めて本のすばらしさに触れた少女を襲う、過酷な運命とは?英連邦作家賞受賞作。


「大いなる遺産」かぁ。ディケンズ苦手なんだけどなぁ、などと不謹慎なことを思いつつページをめくると、瞬く間に魅了されてしまいました。悲劇に巻き込まれ、その現実から逃れることもできず、それでも生きていかねばならなりません。子供たちが夢中になった「大いなる遺産」が、子供たちを救うわけも無く、物語のような奇跡が起こるわけもありません。しかしそんな子供たちもいつかは、マティルダの両親や、ミスター・ワッツのように大人になってゆきます。ミスター・ワッツとの交流や、みんなで共に読んだ「大いなる遺産」のような、子供の心に残る思い出と感情。そんな形にできない物と共に大人になってゆきます。そして、マティルダの父親や、ミスター・ワッツと妻たちの過去も印象的でした。
# by umekononikki | 2013-03-21 22:57 |

火を熾す

火を熾す_f0149664_15464241.jpg火を熾す
ジャック・ロンドン著
柴田元幸訳

Coyote誌上で連載中の「柴田元幸翻訳叢書」、その単行本化第一弾はジャック・ロンドン。『白い牙』『野生の呼び声』の著者として名高いロンドンは、短篇小説の名手でもある。極寒の荒野での人と狼のサバイバル「生への執着」、マウイに伝わる民話をモチーフにした「水の子」、訳し下ろし「世界が若かったとき」など、小説の面白さが存分に味わえる全9篇を収録。

一話ごとに登場人物に心をつかまれ、短編集ながら、長い物語を読んだ様な充実感を得ました。好みを選ぼうにも、どの物語も良く悩んでしまうのですが、やはり最初に読んだ「火を熾す」は衝撃的でした。短編というと、ウイットの効いた小洒落た感の強いイメージでしたが、見事にひっくり返りました。生死がテーマでも、ドライで、尚且つ奥深い。考えてみれば、人間生まれれば当然死ぬんですから。生きている限りは、生きたいと思うことも当然。そして強いものが勝ち、時間が流れると人は老いるもの当然。極々、当たり前のことですが、そんな出来事に大きな感情の波がついて回るから、人間が生きるって事はドラマチックなんですよね。ドライな物語から、読んでいる私が感情的な盛り上がりを感じてしまいました。大阪から名古屋への移動中に読んだのですが、お陰で時間を忘れることができました。面白かったです。
# by umekononikki | 2013-03-20 15:47 |
ピダハン―「言語本能」を超える文化と世界観_f0149664_23151369.jpgピダハン―「言語本能」を超える文化と世界観
ダニエル・L・エヴェレット 著
屋代 通子 訳

著者のピダハン研究を、認知科学者S・ピンカーは「パーティーに投げ込まれた爆弾」と評した。ピダハンはアマゾンの奥地に暮らす少数民族。ピダハンの言語とユニークな認知世界を描きだす科学ノンフィクション。驚きあり笑いありで読み進むうち、私たち自身に巣食う西欧的な普遍幻想が根底から崩れはじめる。とにかく驚きは言語だけではないのだ。ピダハンの文化には右/左の概念や、数の概念、色の名前さえも存在しない。神も、創世神話もない。この文化が何百年にもわたって文明の影響に抵抗できた理由、そしてピダハンの生活と言語の特徴すべての源でもある、彼らの堅固な哲学とは……?

著者とアマゾンを満喫すると共に、とても興味深く読みました。とにかくピダハンの文化には驚かされてばかり。私たちの日常生活でも「価値観が違う」とよく耳にするが、ここまで違うと著者のようになってしまうのかなぁ。とりわけ後半は、言語学に関する記述が中心となる一方、ピダハンの文化の深層にまでせまり面白かったです。言語学となると縁遠く感じますが、言葉を通じてこれほどの考察ができるとは驚きです。そこから明らかになる、ピダハンの文化は、良くぞここまで私たち読者に理解できるような内容に落とし込んだものだと感心させられます。ピダハンの考え方には学ぶところもあり、グーグルアースで手のひらに地球が乗っても、世界はまだまだ広いと感じました。
# by umekononikki | 2013-03-19 23:15 |
ヤマザキ マザック美術館
ヤマザキ マザック美術館_f0149664_22372393.jpg
2013年3月16日(土)、愛知県美術館で「丸山応挙展」を観た後、ヤマザキマザック美術館へ。案内によると、ヴァトー、ブーシェ、フラゴナール、シャルダン等ロココの時代から、新古典主義のアングル、ロマン主義を代表するドラクロワ、写実主義、印象派、エコール・ド・パリ等、18~20世紀のフランス美術が一望できるコレクションです。
1階でチケットを購入し、5~4階が展示室になっていました。うん、確かにロココです。なんともいえない幸福感溢れる絵画が並びます。そんな中、ロダンの彫刻が目を引きました。モディリアーニやシスレーの作品も印象的。それ以上に、私の心を鷲づかみにしたのはエミール・ガレの部屋。ここは圧巻でした。ガレの作品が展示されたガラスケースが、部屋いっぱいに乱立状態で、宝石箱の中に落っこちた小人の気分です。見渡す限りガレの幻想の世界。一つ一つを見る楽しみと共に、沢山の作品の中にたたずむ快感。この部屋だけでも、ここまで足を延ばしたかいがありました。
余談ですが、ヤマザキマザック美術館を後に地下鉄「矢場町駅」近くの「六十一万石」へ。ここの「六十一万石」が好きなんですよね。お土産に購入し、帰路につきました。
# by umekononikki | 2013-03-18 22:38 | 展覧会