人気ブログランキング | 話題のタグを見る

展覧会と本と韓国ドラマと時々K-POPかな・・・。

by 梅子

安土往還記

安土往還記_f0149664_19585233.jpg安土往還記 辻邦生著

このところ気に入っている作家。きっかけはローマ史に興味があり、「背教者ユリアヌス」を読んでから。主人公ユリアヌスが、なんとも生き生きと描写されていました。ユリアヌスの境遇からして「生き生き」といった表現とは程遠いのですが、潔い生き方に魅力を感じます。

「安土往還記」ですね。

宣教師と共にヨーロッパより来た船の、船乗りから観た信長像。船乗りの書簡を基に、和訳調に書かれているところが面白い。これまでの「織田信長」という人物の印象が、ガラリと変わります。そして、物語の基となる書簡が、まるで実在しているような錯覚を覚え、この独特のリアリティが、あたかも信長が隣にいるような体温までをも感じさせます。また、当時の庶民の暮らしぶり、教会の建設、そして安土城が築かれ完成する描写も、パズルが完成していくような高揚があります。
「織田信長」は過激で超人的なイメージが、一気に生身の人間として目の前にいるような気分です。
数々の「織田信長」を題材にした小説がありますが、その中でもとりわけ本作は素晴らしい!
by umekononikki | 2010-04-26 19:59 |