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展覧会と本と韓国ドラマと時々K-POPかな・・・。

by 梅子

運命の人

運命の人_f0149664_85615100.jpg運命の人 山崎豊子著

西山記者事件をベースにしたフィクション。
沖縄返還にまつわる政府の機密文書を入手した新聞記者・弓成。それが元で、逮捕されてしまいます。長期にわたる裁判に、弓成を中心に周囲の人物の行方は・・・。

いつもの山崎さんの作品のごとく、登場する政治家は、実在の名前をもじっただけで面白かったです。ただ、「弓成」という主人公に、最後まで好感が持てなかったのが残念。それでも新聞記者という仕事は、確固たる信念がないと務まらないのだと感じました。そこに襲い掛かる国家権力。
裁判に入り「国民の知る権利」を唱えるメディア。くしくも「尖閣諸島の中国漁船追突事件」のビデオが、YouTubeを通じで公開された時期に読みました。「知る権利とは?」と考えさせられました。また、事件の本質とは違った「男女の関係」を書立てるメディアって、両刃の剣ですよね。
裁判は本質や真実の追求という、思ったような方向に進まないもどかしさがありますが、これが現実なのでしょうね。この時に、眼をそらさずに「どうあるべきか」を論議出来ていれば、現在のメディアのスタンスは変わっていたかもしれないなぁ。
「外務省の取材はお手上げ」だったとあとがきにありましたが、全体的にそんなもどかしさを感じました。メディア側からの視点、求める側の視点はよく理解できますが、外務省側の公開する立場側は明快ではありません。
ラストも、個人的には物足りない感じがします。ただ、「知る権利」や「沖縄問題」について、様々な角度から考えるきっかけを与えてくれた、勉強になる作品でした。
by umekononikki | 2010-11-30 08:56 |