展覧会と本と韓国ドラマと時々K-POPかな・・・。

by 梅子

予告された殺人の記憶

f0149664_942160.jpg予告された殺人の記憶
G.ガルシア=マルケス著
野谷文昭訳

町をあげての婚礼騒ぎの翌朝、充分すぎる犯行予告にもかかわらず、なぜ彼は滅多切りにされねばならなかったのか?閉鎖的な田舎町でほぼ三十年前に起きた幻想とも見紛う殺人事件。凝縮されたその時空間に、差別や妬み、憎悪といった民衆感情、崩壊寸前の共同体のメカニズムを複眼的に捉えつつ、モザイクの如く入り組んだ過去の重層を、哀しみと滑稽、郷愁をこめて録す、熟成の中篇。

この中編と言うにも、短い物語の中にこれだけの内容を詰め込めるものかと、驚きつつ読みました。事実に基づくだけにリアルで、登場人物たちの想いが胸を突きます。まさに、予告されていたにも関わらず何故と思わせる、事件当日の人々の行動。サスペンスドラマの犯人の供述シーンのような、1コマ1コマが手に取るような臨場感。その一方、事実だけの追求ではなく、各人の心のうちや後日譚までが織り込まれています。読後、改めてこの本の薄さに驚くばかり。時間さえも操ったかのような、凝縮されたひと時でした。
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by umekononikki | 2011-04-06 09:04 |