展覧会と本と韓国ドラマと時々K-POPかな・・・。

by 梅子

ふがいない僕は空を見た

f0149664_9373838.jpgふがいない僕は空を見た
窪美澄著

これって性欲?でも、それだけじゃないはず。高校一年、斉藤卓巳。ずっと好きだったクラスメートに告白されても、頭の中はコミケで出会った主婦、あんずのことでいっぱい。団地で暮らす同級生、助産院をいとなむお母さん…16歳のやりきれない思いは周りの人たちに波紋を広げ、彼らの生きかたまでも変えていく。第8回「女による女のためのR‐18文学賞」大賞受賞、嫉妬、感傷、愛着、僕らをゆさぶる衝動をまばゆくさらけだすデビュー作。

これは面白かった。かなり夢中で読んでしまいました。美術の世界でよく論議されるヌードは芸術か猥褻かではないですが、セックスの描写があからさまでエロくてもこの本の場合は文学であると思います。(論ずるまでもありませんが、一応。)
正気と狂気の違い。常識と非常識の差。心と身体はイコールなのか。そんなボーダーライン上に立たされた時、臨む方向と安全な方向が同じとは限らず、安全な方向へ1歩踏み出すことは難しい事なのかもしれません。誰しも誰かを傷つけたいとは思いません。ですが傷つけ、傷つけられた相手は、理不尽だと相手を憎みます。あんずの夫は卓巳を憎み、写真や映像をばら撒きます。周囲の人は面白がって、さらに拍車をかけます。卓巳にしてみれば、理不尽ですよね。卓巳は周囲の人たちに復讐するのか。無差別に殺人をして、世間に復讐するのか。ふがいない卓巳は、ただひたすら耐えるだけ・・・。物語のタイトル「ふがいない僕」は、ここで使うように感じました。
上手に生きられない事は、ふがいない事なのでしょうか。上手に生きることは簡単ではないし、登場人物たちもふがいないとは思わない。ただ周囲からはふがいなく見える、そのギャップがやるせないなぁ。自身と周囲のあらゆる感情に揺さぶられ、どこに着地するのだろうと思いましたが、卓巳だけでなく全ての登場人物に光が差すような爽快なラストは良かったです。
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by umekononikki | 2011-04-15 09:37 |