展覧会と本と韓国ドラマと時々K-POPかな・・・。

by 梅子

無垢の博物館

f0149664_8581797.jpg無垢の博物館
オルハン・パムク著
宮下遼訳

三十歳のケマルは一族の輸入会社の社長を務め、業績は上々だ。可愛く、気立てのよいスィベルと近々婚約式を挙げる予定。だが、ケマルはその存在すら忘れかけていた遠縁の娘、十八歳のフュスンと再会してしまう。フュスンの官能的な美しさに抗いがたい磁力を感じ、ケマルは危険な一歩を踏み出すのだった―トルコの近代化を背景に、ただ愛に忠実に生きた男の数奇な一生を描く。

作者自身も登場するこの気軽さと、楽しさ。1970年代のトルコでは、婚前にセックスする事は西洋の進んだ文化だと考えられる一方、世間一般にはまだまだ認められていません。文化的にも物質的にも、今まさに大きく発展していこうとしている時代を背景に、主人公ケマルは大いに悩みます。裕福な暮らしをする30歳のケマルは、人生において想定外の女性フュスンと出会い、婚約者がいるにも拘らず恋に落ちちゃいます。恋愛上、背信行為であるという点では不倫と言えるのかもしれませんが、私的には結婚前だからセーフと言ってあげたいな。この男、かなりグダグダと独り言を言いながらも、憎めないんですもの。
下巻に入ると、トルコ国内の情勢が悪化します。1970~80年代のトルコは、経済の悪化やクルド問題でテロや軍事クーデターが起こっていたようです。市街地でも爆破が起き、外出が制限されたうえ、ケマルのゴシップ記事が新聞に載ります。そんな世間の風当たりがきつくなるにも関わらず、どこ吹く風のケマル。ひたすらフュスンに想いを寄せ続けます。恐るべし、ケマル氏。そんなケマルのマニアックな想いが、次第に愛おしくなるんだから不思議。鉄道や映画のマニアはいれども、ここまで一人の女性の魅力に憑かれるなんて、「愛」で表現される領域を突き抜けた型破りな恋愛感情。
そして、このラストは好きだなぁ。確かにこの物語、「無垢の博物館」というタイトルに偽りなしです。楽しめました♪
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by umekononikki | 2011-04-18 08:58 |