展覧会と本と韓国ドラマと時々K-POPかな・・・。

by 梅子

アニマルズ・ピープル

f0149664_9391755.jpgアニマルズ・ピープル
インドラ・シンハ著
谷崎由依訳

スラム街の人々から“動物”と呼ばれる青年。インドのカウフプールに住む彼は、赤ん坊の頃に巻き添えとなった汚染事故の後遺症で、四本足での生活を送っていた。汚染事故を起こした「カンパニ」と戦う個性的な仲間たちとの波瀾の日々を―世界最悪と言われた実際の汚染事故を下敷きに、みずからの不遇と容姿に苦悩する青年の生き様をユーモラスに描き上げる傑作長篇。コモンウェルス賞受賞作、ブッカー賞最終候補作。

この物語のベースとなった実際の事故、ボパール化学工場事故について少し。1984年インドのマッディヤ・プラデーシュ州の州都ボーパールで操業していたユニオンカーバイド社の子会社の化学工場から、大量の有毒ガスが流出し、一夜のうちに2000人が死亡、一説では現在までに3万人が死亡したとされています。25年が過ぎた現在でも、周辺住民の健康被害が続いており、責任問題も未解決のままです。
この物語を読むまで、この事件を知りませんでした。こんなにも多数の死者や被害者を出しておきながら、しかも未解決であるにも関わらず、知らなかった事を反省しつつ、この本を読んで良かったと思いました。
物語の舞台は架空の町で、化学工場の事故により多くの住民が被害を受けた町。事故の影響で背中が曲がり、4足歩行を余儀なくされた主人公。工場、行政、被害者、ボランティアの思惑は別々の方向を向き、当事者であるにも拘らず部外者の様な噛み合わない思いにジレンマを感じます。それだけに、様々な思惑の中、主人公は人ではなく“動物”だという独自のスタンスとユーモアが、生きることに対する力強さと、軽快に困難を乗り越える様に魅かれました。眼をそむけたくなるような非情で理不尽な世界に、読者である私を“動物”がラストまで惹きつけてくれました。
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by umekononikki | 2011-04-21 09:39 |