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by 梅子

オスカー・ワオの短く凄まじい人生

f0149664_1031727.jpgオスカー・ワオの短く凄まじい人生
ジュノ・ディアス著
都甲幸治、久保尚美訳

オスカーはファンタジー小説やロールプレイング・ゲームに夢中のオタク青年。心優しいロマンチストだが、女の子にはまったくモテない。不甲斐ない息子の行く末を心配した母親は彼を祖国ドミニカへ送り込み、彼は自分の一族が「フク」と呼ばれるカリブの呪いに囚われていることを知る。独裁者トルヒーヨの政権下で虐殺された祖父、禁じられた恋によって国を追われた母、母との確執から家をとびだした姉。それぞれにフクをめぐる物語があった―。英語とスペイン語、マジックリアリズムとオタク文化が激突する、全く新しいアメリカ文学の声。ピュリツァー賞、全米批評家協会賞をダブル受賞、英米で100万部のベストセラーとなった傑作長篇。

あらすじの「オタク青年」の文字だけを見て軽い気持ちで手に取ったら、かなり重たい内容でした。そして面白かった。なにより、新しい文学のスタイルではないのかと思い、ワクワクしながら読みました。オタク青年オスカーの一族の物語であり、オスカー自身と周辺の人から見たオスカーというように、主観と客観が混ざり興味をそそられる構成。国家の悲劇から、思春期の青年の苦悩まで、多彩な内容。何もかも詰め込み混在しているのに、一つの物語として成立している新しい感覚。
愛すべきオタク青年オスカーの行く末が気になるのは、母親だけでなく読者である私も巻き込みます。オスカーの祖国ドミニカの独裁者トルヒーヨも登場し、先日読んだ「チボの狂宴」で得た知識が、ここで大いに役立つのも嬉しい限り。「チボの狂宴」がドキュメンタリー映像を見ている様であったのに対し、この物語の中では、掌で感じる生々しさがあります。
独裁者の国でも自由の国でも、抑圧された時代でも恵まれた時代でも、幸せを求め一生懸命に生きています。何かを得ようと言う気持ちが強ければ強いほど、多くの人はその代償も沢山支払っているのではないでしょうか。その代償が、「フク」の呪いなのかもしれません。もちろん、オスカーの一族だけじゃありません。しかし強烈に何かを得ようとする感情は、一族に受け継がれてきた物のようですし、やはり「フク」は一族に掛けられた呪いなのかもしれませんね。
なにはともあれ、トルヒーヨ独裁下のドミニカとオタク青年との素晴らしいコラボレーションに、夢中にさせられました。
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by umekononikki | 2011-04-22 10:03 |