展覧会と本と韓国ドラマと時々K-POPかな・・・。

by 梅子

忘れられた花園

f0149664_13532437.jpg忘れられた花園
ケイト・モートン著
青木順子訳

1913年オーストラリアの港に着いたロンドンからの船。すべての乗客が去った後、小さなトランクとともにたったひとり取り残されていた少女。トランクの中には、お伽噺の本が一冊。名前すら語らぬ身元不明のこの少女をオーストラリア人夫婦が引き取り、ネルと名付けて育て上げる。そして21歳の誕生日に、彼女にその事実を告げた。ネルは、その日から過去の虜となった…。時は移り、2005年、オーストラリア、ブリスベンで年老いたネルを看取った孫娘、カサンドラは、ネルが自分にイギリス、コーンウォールにあるコテージを遺してくれたという思いも寄らぬ事実を知らされる。なぜそのコテージはカサンドラに遺されたのか?ネルとはいったい誰だったのか?茨の迷路の先に封印され忘れられた花園のあるコテージはカサンドラに何を語るのか?サンデー・タイムズ・ベストセラー第1位。Amazon.comベストブック。オーストラリアABIA年間最優秀小説賞受賞。

夢中になって読みました。読み終わるのが勿体ないくらい、面白かったです。
過去と現在を往復し、舞台も変わりながら、ゆっくりと確実に核心へ近付いていきます。100年近くにわたる時間の隔たりを超え、オーストラリアとイギリスという離れた場所が繋がる、どこかファンタジーな雰囲気が心地よく感じます。トランクにお伽話の本に挿絵と、遺産に一族の秘密、巨大な迷路。まさにお伽語に出てくるようなアイテムが物語の世界に引き込ませ、登場人物たちも自身の感情を多く語らず、どこか含みのあるところが想像を膨らませます。子供の頃、母の本棚から取り出して読んだ本の様な、ノスタルジックな感情を思い出させる、どこをとってもかなり好みな作品でした。前半は謎解きに楽しませてもらい、後半は物語としてどう展開するか眼が離せません。そして、3世代の女性たちが懸命に生きたさまに、静かな感動を覚えます。100年前の大きなお屋敷での物語に現実離れを感じつつも、ラストにはぐっと現代に手繰り寄せられる力強さ。この余韻にしばらく浸っていたいです。
近年流行りのトリックを駆使したスピード感のあるミステリーも良いですが、こんなアナログな謎解きもいかがでしょうか。一駅に一つのエピソードを拾いながら走る鈍行列車に乗って、小さな頃に置き忘れた記憶と、過去の歴史の欠片を集めていくような物語でした。
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by umekononikki | 2011-04-28 13:53 |