展覧会と本と韓国ドラマと時々K-POPかな・・・。

by 梅子

黄色い雨

f0149664_9364514.jpg黄色い雨
フリオ・リャマサーレス著
木村榮一訳

沈黙と記憶に蝕まれて、すべてが朽ちゆく村で、亡霊とともに日々を過ごす男の物語。

非常に良かったです。「孤独」がこれほども美しく感じるなんて。読後、しばし余韻に浸ってしまいました。
家族も様々な形で去ってゆき、村人も去り、一人残った男の物語なのですが、既に死んでいるシーンから物語は始まります。消えゆく炎の最後の儚い光のように、男の命も人の生活の営みの無い村をほのかに照らします。何故、男は村を去らなかったのでしょう?これまで過ごしてきた村を、捨てることができなかったから?去る理由が無かったから?生への執着より、死ぬ準備ができていないだけ?物が朽ちてゆくと同時に、そこでの記憶までもが朽ちてゆくかのような、消えゆくことへの名残り惜しさ。男は頑固で偏屈で、家族や村人たちから、好かれてはいなかったでしょうか。それとも、孤独な生活が彼をその様にしてしまったのでしょうか。
「孤独」の中で、自身を見つめ、過去を見つめ、生と死を見つめる男に、多くの想像と様々な感情が押し寄せるような、世界がどこまでも膨らんでいく奥行きのある物語でした。
[PR]
by umekononikki | 2011-08-10 09:36 |