展覧会と本と韓国ドラマと時々K-POPかな・・・。

by 梅子

コウモリの見た夢

f0149664_10353213.jpgコウモリの見た夢
モーシン・ハミッド著
川上純子訳

「何かお手伝いいたしましょうか?」ある日の午後、ラホールの旧市街アナールカリ・バザールの近くで「僕」は何かを探している様子のアメリカ人と思しき男に声をかける。警戒する男に「僕」は、自分もアメリカのプリンストン大学を卒業し、ニューヨークの第一線で仕事をしていた人間だ、と切り出す。そして不思議な運命に翻弄された自分の半生を語りだした―ニューヨークでの生活、仕事、アメリカンドリーム、恋、そして9.11。暖かな午後が夕暮れを迎え、そして夜の帳が下りるころ、「僕」の物語は不穏な様相を呈しはじめ…。パキスタン人作家が描く、「グレートギャツビー」と「ノルウェイの森」の世界。そして、9.11後のアメリカ。ブッカー賞最終候補作。

面白かったです。理解しあえない、受け入れることも受け入れられることもない、『異邦人』であることの疎外感が伝わってきます。集団の中にいる孤独。アメリカにおける9.11とは、こんなにも根深いものなのかと感じます。大切な人を失うだけでなく、その国に住む人の価値観さえもが変わったのだと、肌で感じたような気分です。そして、会話の相手の反応が書かれていない不安と、「僕」の人生の孤独と暗転がリンクして、先を読まずにはいられませんでした。「僕」がアメリカ人旅行者に人生を語るという、シンプルで短い物語の中に、「僕」自身の想いや感情の変遷が見事に込められているのですから素晴らしいです。加えてこのラストは好きだなぁ。
[PR]
by umekononikki | 2011-09-05 10:35 |