展覧会と本と韓国ドラマと時々K-POPかな・・・。

by 梅子

ボディ・アーティスト

f0149664_10373737.jpgボディ・アーティスト
ドン・デローロ著
上岡伸雄訳

映画監督の夫を自殺で失ったローレン。精神のバランスを崩す彼女の前に、謎の男が現れる。まともに口を利くことができず、時間の経過も認識できないらしい男は、やがて自殺した夫の声で話し始め、知りえないはずの夫婦の会話を再現し始める。彼に引きずられるようにローレンの「現実」も変化をはじめて…。一人の女性の変わりゆく姿を透明感のある美しい文体で描いた、アメリカ文学の巨人デリーロの精緻な物語。

断片的な映像をつなげた映画をみている様な、鮮やかに浮かぶ情景と、とりとめの無さが良かったです。自分を見失い、再び自分を見つけるまでの「変化」を具象化したような物語に思えました。
誰にでも訪れる可能性のある、「最愛の人」との永遠の別れ。家族であったり、友人だったりと様々ですが、その時のぽっかりと空いた穴を埋めることは簡単ではありません。ショックが大きければ大きいほど、心は現実世界から離れてしまうのかもしれません。中に浮いてしまった心が、如何に地上に着地するかを、どこか異世界に迷い込んだかのような感覚で描いたように感じました。そして再び地上に着地した地点は、浮いてしまう前とは違った希望ある場所の様に思えました。乗り越えると人間は、深みを増すものですよね。苦労や苦しみを知っているからこそ、人として成長できるものです。そんな希望の光が見えるラストでした。
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by umekononikki | 2011-09-06 10:37 |