展覧会と本と韓国ドラマと時々K-POPかな・・・。

by 梅子

ネザーランド

f0149664_13244110.jpgネザーランド
ジョセフ・オニール著
古屋美登里訳

ある春の夕方に届いた訃報。ロンドンに暮らすオランダ人ハンスの思いは、4年前のニューヨークへさかのぼる―2002年。アメリカを厭う妻は幼い息子を連れてロンドンに居を移し、ハンスは孤独で虚ろな日々を送っていた。しかし、ふとしたきっかけで遠い少年時代に親しんだスポーツ、クリケットを再開したことで、大都市のまったく違った様相をかいまみる。失うとは、得るとは、どういうことか。故郷とは、絆とは―。数々の作家・批評家が驚嘆した注目の作家がしなやかにつづる感動作。PEN/フォークナー賞受賞。

人があふれる大都市にいながら感じる孤独は、まさに現代的な孤独かもと思いました。人や物は溢れんばかりに周囲を埋め尽くしながらも満たされない心に、場所や時間が交錯するように物語が進むので、主人公の胸の中を小舟でさまよっているかのようでした。クリケットが彼の心の支えになりますが、クリケット自体がマイナースポーツ。マイノリティーが土地になじむためにはあまり役立ってはくれません。しかし、クリケットを通じ、様々な人と出会い、様々な町の断片を見ることができます。大都会では、立ち居地ひとつで多くを失ったり、得ることができたりするのかもしれません。そして現代社会では、生死を分ける一大事というほどではないが為の苦しみを「憂鬱」といい、本人が気付かないうちに着実に首を絞められているような漠然とした不安から逃れることの困難さを感じました。混沌の中、優柔不断な主人公も、直接的にではないにせよ、クリケットという心の支えで、自分を見失わずに歩みだせたのかなとも思いました。
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by umekononikki | 2011-11-07 13:24 |