展覧会と本と韓国ドラマと時々K-POPかな・・・。

by 梅子

ブルックリン・フォリーズ

f0149664_21501932.jpgブルックリン・フォリーズ
ポール・オースター著
柴田元幸訳

幸せは思いがけないところから転がり込んでくる──傷ついた犬のように、私は生まれた場所へと這い戻ってきた──一人で静かに人生を振り返ろうと思っていたネイサンは、ブルックリンならではの自由で気ままな人々と再会し、とんでもない冒険に巻き込まれてゆく。9・11直前までの日々。オースターならではの、ブルックリンの賛歌、家族の再生の物語。感動の新作長編。

まだまだオースター初心者の私ですが、「流石、オースター!」と言わせて下さい。幸せな読書の時間を味わいました。
人生ってコロコロ転がる石のよう。それでも転がっているうちに研磨させて、ピカピカになれれば素敵だなと感じながら読んでいました。「人生山あり谷あり」とはよく言ったもの。しかもその谷が、想像を絶するほどの断崖だとは・・・。
阪神淡路大震災を経験したものの、その記憶は年々風化していきます。あの震災が起こった当時は、震災前と後の世界は違う世界だったのに。9・11も昨年の大震災も、起きる前と後とでは世界が変わってしまうほどの衝撃です。好むとも好まざるとも関わらず、昨日までの価値観が翌日には大きく変わってしまうことは、人間の短い一生であっても誰もが経験するものなのでしょうか。阪神淡路大震災の記憶は、自身が年齢を重ねるごとに、価値観の転換を強いられたことより、昔の思い出的なレトロな感傷に変わりつつあります。いつまでも当時の衝撃を、新鮮なまま心に留めておくことは辛すぎることですし。
そんな経験からか、物語のラストはこれまで語られてきた幸福が、過去の思い出のように一気に色あせるかのような衝撃がありました。登場人物たちには、深い傷となって心に刻まれるのでしょうが、そこからもいつかは再生し、過去の記憶の一つとなってゆくように感じました。
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by umekononikki | 2012-07-20 21:50 |