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by 梅子

庭、灰/見えない都市 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集2)

f0149664_19323723.jpg庭、灰/見えない都市 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集2)


庭、灰
ダニロ・キシュ 著
山崎 佳代子 訳

少年に多くの謎を残し、アウシュヴィッツで消息を絶った父。甘やかな幼年時代が戦争によってもぎとられ、逃避行を余儀なくされる一家の悲劇を、抒情とアイロニーに満ちた筆致で描く自伝的長篇。初邦訳。

解説を読んで、かろうじて飲み込むことのできた物語。自身の勉強不足が原因です。解説によればかなり前衛的な作品とありましたが、この世界文学全集は本当に野心的。好みであっても、好みじゃなくても、そこには心を掴まれる独創性がありますよね。ホント、毎度やられっぱなしです。さて物語ですが、悲劇的な幼年時代の中にも、見つけたい「何か」が落ちているのではないかと、記憶の断片が入った箱をかき回しているような印象でした。見つけたい「何か」が、一体何なのか。少年自身も掴みきれていないことも、少年にとっては悲劇の一因なのかもしれません。過去という土台の上に立っている現在の自分を肯定するためにも、過去は以外にも重要な要素であるということなのでしょうね。


見えない都市
イタロ・カルヴィーノ 著
米川良夫 訳

ヴェネツィア生まれのマルコ・ポーロが皇帝フビライ汗に報告する諸都市の情景。女性の名を有する55の都市を、記憶、欲望、精緻、眼差というテーマで分類し、見えない秩序を探る驚異の物語。

これは理屈ではなく、感覚で楽しむ物語なのでしょう。物語としての筋が極薄で、断片の結集ですが、やはり物語として成立していますよね。教訓じみた、真実ではない諸都市の情景。しかしそこには何かがあり、眼に見え、存在することが世界の全てではないと、現実と幻想の隙間を旅したような気分になりました。時々挟まれる、あのマルコ・ポーロと、あのフビライ汗との会話が、この世じゃない世界から現実世界へ連れ戻してくれる灯台の様な役割のように感じました。「庭、灰」とは掴もうとしているものが全く別物ですが、いずれも眼に見えない何かを掴もうと手を伸ばしたような物語でした。
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by umekononikki | 2012-08-27 19:32 |