展覧会と本と韓国ドラマと時々K-POPかな・・・。

by 梅子

鉄の時代

f0149664_18555849.jpg鉄の時代
(池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-11)
J.M. クッツェー 著
くぼた のぞみ 訳

反アパルトヘイトの嵐が吹き荒れる南ア、ケープタウン。末期ガンを宣告された一人暮らしの初老の女性ミセス・ヘレンは、自分が目の当たりにした黒人への暴力の現実を、遠く離れて暮らす娘に宛て、遺書のかたちで書き残す。そして、彼女の家の庭先に住みつき、次第に心を通わせるようになったホームレスの男に、その遺書を託そうと決意するのだった―英語圏を代表する作家の傑作。

死を前にした女性の力強さに圧倒され、穏やかな死が訪れることを想像させられる、もしくはそう願いたくなるラストが胸にしみました。アパルトヘイトの絶望を、死を前にした女性が娘への遺書という形でつづられるところが秀逸。南アフリカに生まれたことも、老女に訪れる死も、どちらも自分の意思とは関係なく与えられた情況の中で理不尽と割り切ることのできない複雑さ感じます。この切り口で表現した手腕は素晴らしいですね。アパルトヘイトの絶望そのものを描写するのではなく、間接的に表現したところに、絶望以上の絶望を見せられました。夢中になって読みました。
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by umekononikki | 2012-11-26 18:56 |