展覧会と本と韓国ドラマと時々K-POPかな・・・。

by 梅子

停電の夜に

f0149664_16142993.jpg停電の夜に
ジュンパ・ラヒリ著
小川高義訳

9つの短い物語からなる短篇集。どの物語も読んだあとに、繊細な、人の心のひだに確かに触れたと思う感触と切ない余韻が残って、読後感がとてもいい。登場するのは一旗あげるためにインドから米国へ移民してきた人たちで、著者ラヒリにとっては父母の世代にあたるインド系1世と、その子ども世代。だから物語はインドと米国の間を行ったり来たりしながら展開する。
さりげなく書き込まれる料理、スパイスのにおい、衣装や装飾、そして夫婦間のやりとりといった文化の機微のなかに、ひとりひとりの人物像が鮮やかに、しかし淡々とした筆致で描かれていく。どの物語にも共通するのは、インドにはあったけれど米国にはない濃密な人間関係、その喪失感とそのために起きる心の揺らぎや戸惑い、身の置きどころのなさといったものだ。
著者ジュンパ・ラヒリは1967年ロンドン生まれの米国在住の作家。カルカッタ出身の父親は、本書を締めくくる「三度目で最後の大陸」の主人公のように、大学図書館に勤めていたという。このデビュー作でO・ヘンリー賞、PEN/ヘミングウェイ賞など数々の賞に輝き、ピューリッツァー賞まで受賞した期待の新人である。


非常に良かったです!私も訳者と同じ「三度目で最後の大陸」がお気に入り。場違いな場所にいる時など、痛さというほどではない痛さを感じることがあります。また、夫婦はもちろん、友人同士、会社の同僚、親子の間にも「違い」があり、毎日「違い」を感じながら生活しているのですから、誰もが共感できる思いの一つですよね。淡々とした表現で、登場人物たちの微妙な距離感の変化から、繊細で複雑な「違い」を見事に感じさせてくれました。自分以外の人間とは違っていて当たり前のことなのですが、そうとはわかっていてもその違いを乗り越えることは、時として容易ではないものですよね。その違いを乗り越えた物語も、乗り越えられなかった物語のいずれも、そこに存在する違いを見つめている点が読後に救われた気分にさせられました。
この本がデビュー作だそうですが、2000年の発行ですから他にも本が出ているかもしれませんね。チェックせねばっ!

ということで、遅ればせながら、明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
さて、今年が始まってしまいました。昨年ほど読書の時間が作れなくなりそうな今年。それに遅読だし・・・。量を読めば良いとは思いませんが、それでも1ヶ月に10冊を目標に頑張りたいなぁ。一年の計は元旦にありです。今年も頑張るぞ!
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by umekononikki | 2013-01-01 16:15 |