展覧会と本と韓国ドラマと時々K-POPかな・・・。

by 梅子

火山のふもとで

f0149664_215321100.jpg火山のふもとで
松家仁之 著

「夏の家」では、先生がいちばんの早起きだった。―物語は、1982年、およそ10年ぶりに噴火した浅間山のふもとの山荘で始まる。「ぼく」が入所した村井設計事務所は、夏になると、軽井沢の別荘地に事務所機能を移転するのが慣わしだった。所長は、大戦前のアメリカでフランク・ロイド・ライトに師事し、時代に左右されない質実でうつくしい建物を生みだしてきた寡黙な老建築家。秋に控えた「国立現代図書館」設計コンペに向けて、所員たちの仕事は佳境を迎え、その一方、先生の姪と「ぼく」とのひそやかな恋が、ただいちどの夏に刻まれてゆく―。小説を読むよろこびがひとつひとつのディテールに満ちあふれた、類まれなデビュー長篇。

いや~、これは良かった。じんわりくる暖かい人間関係。ちょっと前の時代への、ノスタルジックな雰囲気。あっ、考えてみれば30年前が舞台なのね。「ちょっと前の時代」と感じる私自身が歳をとったということなのですね。
さて、ほとんど登場しない村井設計事務所の所長村井氏。彼の人柄が、そこで働く人々を通じて伝わってきます。読んでる私までもが、以前この職場で働いたことを誇りに感じるような気分にさせられました。30年前といえば、もちろん携帯電話もウィンドウズもない時代。考えてみれば、そんな便利な機械に人間が振り回される前の時代。バブル時代のまだ前。そんな時代がとてもよき時代に感じる物語の世界に、心地よく浸ることができました。
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by umekononikki | 2013-02-20 21:53 |