展覧会と本と韓国ドラマと時々K-POPかな・・・。

by 梅子

カテゴリ:本( 331 )

ニュートンと贋金づくり

f0149664_19553352.jpgニュートンと贋金づくり
天才科学者が追った世紀の大犯罪

トマス・レヴェンソン著
寺西のぶ子訳

欧州最高の知性 vs. 英国最悪の知能犯
万有引力を発見し、近代物理学に巨大な足跡を残した天才科学者ニュートン。後年は王立造幣局に長官として迎えられ、イギリスの貨幣政策に多大な貢献をしたことが知られていますが、それと同じ時期に、ある一人の贋金づくりと熾烈な頭脳戦を繰り広げていたことは、これまでほとんど語られてきませんでした。その贋金づくりの名は、ウィリアム・チャロナー。イギリス史上類を見ない巨額の贋金事件の首謀者です。
本書は、膨大な資料と綿密な分析をもとに、ニュートンの捜査官としての知られざる一面に初めてスポットを当て、事件解決にいたる攻防をスリリングに描いたノンフィクションです。天才科学者はいかにして世紀の大悪党を追ったのか……ぜひ本書をご一読ください。


事実をもとにした物語だと思って読み始めましたが、ノンフィクションでした。タイトルにある贋金事件だけでなく、ニュートン自身の魅力にも迫り面白かったです。私の中ではリンゴの木の横に立っているイラストのイメージだったのですが、生身の魅力溢れる人物として生まれ変わりました。そもそもニュートンについて無知すぎました。こんなにも多くの功績を残した人物だったとは驚きです。しかも、大天才の割りに、偏った才能ではなく、何でもできちゃう万能の人なんですから、そりゃ万有引力の発見なんて朝飯前って感じなのかもしれません。それは言いすぎって?いえいえ、スーパーコンピュータ並みの計算を、生身の人間がやっちゃたんですから言い過ぎではないでしょう。そして、贋金事件の首謀者との対決後、ニュートン晩年まで、楽しませてくれます。いやはや、ニュートンが好きになっちゃう1冊でした。
[PR]
by umekononikki | 2013-03-23 19:56 |

ミスター・ピップ

f0149664_22574341.jpgミスター・ピップ
ロイド ジョーンズ 著
大友 りお 訳

舞台は1990年初頭、ブーゲンヴィル島がパプア・ニューギニア政府によって封鎖された三年間。島の唯一の白人ミスター・ワッツが、ディケンズの小説『大いなる遺産』を子どもたちに一章ずつ朗読するところから物語は始まる。子どもたちは作品に描かれた英国社会に最初はとまどうが、次第に主人公の孤児ピップが本当に生きているように感じはじめ、村に近づく独立抗争の暗い影におびえつつも、ピップの世界で想像をふくらませる。
初めて本のすばらしさに触れた少女を襲う、過酷な運命とは?英連邦作家賞受賞作。


「大いなる遺産」かぁ。ディケンズ苦手なんだけどなぁ、などと不謹慎なことを思いつつページをめくると、瞬く間に魅了されてしまいました。悲劇に巻き込まれ、その現実から逃れることもできず、それでも生きていかねばならなりません。子供たちが夢中になった「大いなる遺産」が、子供たちを救うわけも無く、物語のような奇跡が起こるわけもありません。しかしそんな子供たちもいつかは、マティルダの両親や、ミスター・ワッツのように大人になってゆきます。ミスター・ワッツとの交流や、みんなで共に読んだ「大いなる遺産」のような、子供の心に残る思い出と感情。そんな形にできない物と共に大人になってゆきます。そして、マティルダの父親や、ミスター・ワッツと妻たちの過去も印象的でした。
[PR]
by umekononikki | 2013-03-21 22:57 |

火を熾す

f0149664_15464241.jpg火を熾す
ジャック・ロンドン著
柴田元幸訳

Coyote誌上で連載中の「柴田元幸翻訳叢書」、その単行本化第一弾はジャック・ロンドン。『白い牙』『野生の呼び声』の著者として名高いロンドンは、短篇小説の名手でもある。極寒の荒野での人と狼のサバイバル「生への執着」、マウイに伝わる民話をモチーフにした「水の子」、訳し下ろし「世界が若かったとき」など、小説の面白さが存分に味わえる全9篇を収録。

一話ごとに登場人物に心をつかまれ、短編集ながら、長い物語を読んだ様な充実感を得ました。好みを選ぼうにも、どの物語も良く悩んでしまうのですが、やはり最初に読んだ「火を熾す」は衝撃的でした。短編というと、ウイットの効いた小洒落た感の強いイメージでしたが、見事にひっくり返りました。生死がテーマでも、ドライで、尚且つ奥深い。考えてみれば、人間生まれれば当然死ぬんですから。生きている限りは、生きたいと思うことも当然。そして強いものが勝ち、時間が流れると人は老いるもの当然。極々、当たり前のことですが、そんな出来事に大きな感情の波がついて回るから、人間が生きるって事はドラマチックなんですよね。ドライな物語から、読んでいる私が感情的な盛り上がりを感じてしまいました。大阪から名古屋への移動中に読んだのですが、お陰で時間を忘れることができました。面白かったです。
[PR]
by umekononikki | 2013-03-20 15:47 |
f0149664_23151369.jpgピダハン―「言語本能」を超える文化と世界観
ダニエル・L・エヴェレット 著
屋代 通子 訳

著者のピダハン研究を、認知科学者S・ピンカーは「パーティーに投げ込まれた爆弾」と評した。ピダハンはアマゾンの奥地に暮らす少数民族。ピダハンの言語とユニークな認知世界を描きだす科学ノンフィクション。驚きあり笑いありで読み進むうち、私たち自身に巣食う西欧的な普遍幻想が根底から崩れはじめる。とにかく驚きは言語だけではないのだ。ピダハンの文化には右/左の概念や、数の概念、色の名前さえも存在しない。神も、創世神話もない。この文化が何百年にもわたって文明の影響に抵抗できた理由、そしてピダハンの生活と言語の特徴すべての源でもある、彼らの堅固な哲学とは……?

著者とアマゾンを満喫すると共に、とても興味深く読みました。とにかくピダハンの文化には驚かされてばかり。私たちの日常生活でも「価値観が違う」とよく耳にするが、ここまで違うと著者のようになってしまうのかなぁ。とりわけ後半は、言語学に関する記述が中心となる一方、ピダハンの文化の深層にまでせまり面白かったです。言語学となると縁遠く感じますが、言葉を通じてこれほどの考察ができるとは驚きです。そこから明らかになる、ピダハンの文化は、良くぞここまで私たち読者に理解できるような内容に落とし込んだものだと感心させられます。ピダハンの考え方には学ぶところもあり、グーグルアースで手のひらに地球が乗っても、世界はまだまだ広いと感じました。
[PR]
by umekononikki | 2013-03-19 23:15 |

河岸忘日抄

f0149664_22214427.jpg河岸忘日抄
堀江敏幸著

ためらいつづけることの、何という贅沢──。ひとりの老人の世話で、異国のとある河岸に繋留された船に住むことになった「彼」は、古い家具とレコードが整然と並ぶリビングを珈琲の香りで満たしながら、本を読み、時折訪れる郵便配達夫と語らう。ゆるやかに流れる時間のなかで、日を忘れるために。動かぬ船内で言葉を紡ぎつつ、なおどこかへの移動を試みる傑作長編小説。

これは良かった。南仏で船上で生活しながら、緩やかな時を過ごす主人公の「彼」。そんな「彼」の時間を、共に共有し、心地よさに浸ってしまいました。異国の地にありながら、「彼」の周りには日本的な時間の流れがあるようで、その流れに引き寄せられるように様々な人が集まってきます。日本にいる枕木さんのFAXや郵便を待ちながら過ごす日々。これといった事件も無く、かといって私たちが送っている日常とは違う生活に、魅力を感じます。人に平等に流れる時が、こんなにも質や早さが違うものなのかと思わされました。楽しい時間は早く、苦しい時間は長いもの。そんな毎日も、振り返ればあっという間に過ぎ去ったように感じます。子供の頃は大人になる未来への時間はゆっくりでしたよね。
そんな変化する時間を捉えた物語でした。じっくり味わいながら読みました。
[PR]
by umekononikki | 2013-03-08 22:22 |

風の影

f0149664_2151639.jpg風の影
カルロス・ルイス・サフォン著
木村裕美訳

1945年のバルセロナ。霧深い夏の朝、ダニエル少年は父親に連れて行かれた「忘れられた本の墓場」で出遭った『風の影』に深く感動する。謎の作家フリアン・カラックスの隠された過去の探求は、内戦に傷ついた都市の記憶を甦らせるとともに、愛と憎悪に満ちた物語の中で少年の精神を成長させる…。17言語、37カ国で翻訳出版され、世界中の読者から熱い支持を得ている本格的歴史、恋愛、冒険ミステリー。

図書館で通勤に読もうとうっかり手に取り、夢中になりすぎて乗り過ごしそうになりました。とても楽しめた物語。謎めいた本の墓場に、いわくつきの本、そしていかにも悪者~って容姿の人物が登場し、恋愛、冒険、少年の成長物語ときて、夢中にならないわけが無い。
バルセロナが舞台になると、こんなにも濃い成長物語になるものかと、物語の世界に魅了されました。とにかく多くの人の思いが、複雑に重層的に交錯し圧倒されました。もっとも、顔の無い人物の正体は、途中で誰だか気がつきましたが、それでもまだまだ謎はつきません。ダニエルと父親、フリアン・カラックスの人生、そして未来へ続く人生と、様々にリンクし、救いようの無い物語が、徐々に希望を感じれる物語に変化していくようでした。
[PR]
by umekononikki | 2013-03-04 21:51 |

蜘蛛女のキス

f0149664_22373476.jpg蜘蛛女のキス
マヌエル・プレイグ著
野谷文昭訳

ブエノスアイレスの刑務所の監房で同室になった二人、同性愛者のモリーナと革命家バレンティンは映画のストーリーについて語りあうことで夜を過ごしていた。主義主張あらゆる面で正反対の二人だったが、やがてお互いを理解しあい、それぞれが内に秘めていた孤独を分かちあうようになる。両者の心は急速に近づくが―。モリーナの言葉が読む者を濃密な空気に満ちた世界へ誘う。

前半は、会話の洪水。とにかくモリーナが、映画のストーリーを語る、語る。しかも「おねぇ言葉」で。次から次へと映画の話が続き、すっかり何を読んでいるのか忘れるくらい、モリーナの語りに魅了されてしまいました。後半にようやく舞台が刑務所で、モリーナは同性愛者であることを思い出さされます。監房という極限られた空間で展開される、非常に濃密なドラマに夢中にさせられました。う~ん、このラスト、嫌いじゃないのよね~。面白かったです。
[PR]
by umekononikki | 2013-02-22 22:37 |

火山のふもとで

f0149664_215321100.jpg火山のふもとで
松家仁之 著

「夏の家」では、先生がいちばんの早起きだった。―物語は、1982年、およそ10年ぶりに噴火した浅間山のふもとの山荘で始まる。「ぼく」が入所した村井設計事務所は、夏になると、軽井沢の別荘地に事務所機能を移転するのが慣わしだった。所長は、大戦前のアメリカでフランク・ロイド・ライトに師事し、時代に左右されない質実でうつくしい建物を生みだしてきた寡黙な老建築家。秋に控えた「国立現代図書館」設計コンペに向けて、所員たちの仕事は佳境を迎え、その一方、先生の姪と「ぼく」とのひそやかな恋が、ただいちどの夏に刻まれてゆく―。小説を読むよろこびがひとつひとつのディテールに満ちあふれた、類まれなデビュー長篇。

いや~、これは良かった。じんわりくる暖かい人間関係。ちょっと前の時代への、ノスタルジックな雰囲気。あっ、考えてみれば30年前が舞台なのね。「ちょっと前の時代」と感じる私自身が歳をとったということなのですね。
さて、ほとんど登場しない村井設計事務所の所長村井氏。彼の人柄が、そこで働く人々を通じて伝わってきます。読んでる私までもが、以前この職場で働いたことを誇りに感じるような気分にさせられました。30年前といえば、もちろん携帯電話もウィンドウズもない時代。考えてみれば、そんな便利な機械に人間が振り回される前の時代。バブル時代のまだ前。そんな時代がとてもよき時代に感じる物語の世界に、心地よく浸ることができました。
[PR]
by umekononikki | 2013-02-20 21:53 |

冬の夜ひとりの旅人が

f0149664_16591060.jpg冬の夜ひとりの旅人が
イタロ・カルヴィーノ著
脇功訳

次々に斬新な方法を創り出すイタリアの作家の、型破りな作品。すぐに中断してしまう、まったく別個の物語の断片の間で右往左往する「男性読者」とそれにまつわる「女性読者」を軸に展開される。読者は、作品を読み進みながら、創作の困難を作者と共に味わっている気持ちになる、不思議な小説。

斬新な展開に、頭を抱えながら読んでしまいました。様々な物語が断片的に挿入され、どれ一つとして取っ掛かり部分だけで終わっていまいジレンマを抱えてしまいます。それでも一応「男性読者」がどうなるのかと、先を読まずにはいられない魅力もあります。(しかし、読み進めるには、努力が必要でしたが・・・。)そんな、「物語を読む」という迷宮に迷い込み、最後はこんなオチでいいのかと益々迷宮深くに迷い込みます。これも作者の仕掛けた罠に、見事にはまってしまったといえるのでしょう。
[PR]
by umekononikki | 2013-02-17 16:59 |

わたしの渡世日記

f0149664_22281112.jpgわたしの渡世日記
高峰秀子 著

女優・高峰秀子は、いかにして生まれたか―複雑な家庭環境、義母との確執、映画デビュー、養父・東海林太郎との別れ、青年・黒沢明との初恋など、波瀾の半生を常に明るく前向きに生きた著者が、ユーモアあふれる筆で綴った、日本エッセイスト・クラブ賞受賞の傑作自叙エッセイ。映画スチール写真、ブロマイドなども多数掲載。

昨年は失業中でしたが、今月から働き始めました。う~ん、仕事に慣れるまでは読書もスローペースになるでしょう。加えて春から、これまで勉強したいと考えていたことを始めようかと検討中。益々、読書の時間が減ります。
さて今回は女優、高峰秀子。はっはっはっ、まずは笑って誤魔化してみました。だって「高峰秀子」さんを存じ上げない。しかしこの方の人生は面白かった!時代背景もさることながら、家族に戦争、女優としての生き様から著名人との交友関係まで、持って生まれた魅力もあるのでしょうが、普通の人間ならとうに根を上げてしまいそうな苦難を乗り越えてこその魅力が、読者を惹きつけてやまないのでしょう。「こんなこともありました。」と、その苦難をこれほどあっさりと書いてしまう辺り、この人は人生で何を見て何を考えて、どんな境地にいるのだろうと思わずにはいられません。できれば苦労はしたくないのですが、誰しも苦労してこその成長で、人生は決して苦労だけでは終わらず、その裏には幸せな時間もあることを知っています。回りを見れば彼女の様な著名人ではなくとも、尊敬する方々がいます。そんな方々の支えもあり、改めて人生を前を向いて歩んで生きたいと元気をもらえました。面白かったです。映画も併せて観てみようと思います。
[PR]
by umekononikki | 2013-02-10 22:29 |