展覧会と本と韓国ドラマと時々K-POPかな・・・。

by 梅子

<   2011年 07月 ( 14 )   > この月の画像一覧

銀の匙

f0149664_940835.jpg銀の匙
中勘助著

なかなか開かなかった茶箪笥の抽匣(ひきだし)からみつけた銀の匙。伯母さんの無限の愛情に包まれて過ごした日々。少年時代の思い出を中勘助(1885-1965)が自伝風に綴ったこの作品には、子ども自身の感情世界が、子どもが感じ体験したままに素直に描き出されている。漱石が未曾有の秀作として絶賛した名作。

非常に良かったです。私自身が経験した訳でもない主人公の子供時代が、懐かしい世界として広がります。親の愛情を受けて幸福だった子供の頃の、記憶にない記憶がよみがえるような心地良さ。美しい日本語で綴られているからなのでしょうが、その言葉を通じて直接、脳裏に映像が浮かび、素直に世界に入ることができました。そんな子供の世界に浸かっていても、ごく自然に時間は流れ、ゆっくりと着実に成長し、当然のことながら少年は大人になります。その時間の流れの無理のないこと!人は生まれ、成長し、大人になり、老いてゆく。当然のことながらも、その営みの美しさを感じる、素晴らしい物語でした。
[PR]
by umekononikki | 2011-07-29 09:40 |
f0149664_1010945.jpgレンブラント
光と影のリアリティ
熊澤弘著

早熟な天才としてのデビュー、画家としての成功による経済的繁栄、そして没落、破産、そして孤独な死……文字通り波乱に満ちた生涯を生きた「光と陰影」の画家の生涯を作品と共に綴る、大好評アートガイド。

先日、名古屋での展覧会を観て非常に良かったので、手にとってみました。レンブラントはあまりにも有名で、その生涯は知っていはしました。いえ、知っているつもりだっただけです。文庫本ですが侮ってはいけません。充実の内容!レンブラントの画業を追いながら、レンブラントの私生活からオランダの当時の絵画事情や経済、歴史が織り込まれ、勉強になりました。これまで一般的とされていた説が覆され、非常に興味深かったです。天才肌で、自身も天才だと分かっていて、気分屋で、可愛い妻サスキアを心から愛し、金銭感覚が全くないという、滅茶苦茶なイメージを持っていました。本当に失礼しました。画家としての成功と転落の「光と影」ではなく、家庭的を得る幸せと、失う寂しさ、画業を貫く探求心と金銭問題への苦悩など、多くの「光と影」が付きまといます。「多岐にわたる独創性に、筆を尽くすことができなかった」とあとがきにも書かれていましたが、まさにその通りで、レンブラントについてもっと知りたいという欲求が増すばかりです。広く浅く紹介されていただけに「なぜ」という疑問が多く生まれ、「なぜ」と思えることに興奮できる魅力があります。こんなにも面白い画家だったとは!!!
[PR]
by umekononikki | 2011-07-28 10:10 |

盗まれっ子

f0149664_9244273.jpg盗まれっ子
キース・ドノヒュー著
田口俊樹訳

何年も待ちつづけてきてようやく人間の子供に戻ったヘンリー・デイ。ある日突然、ホブゴブリン(小鬼)として生きることになったエニデイ。森の中の魔的な世界と現実の世界、子供時代の記憶と大人の時間、幸福と孤独。立場を取り替えられたふたりの少年が過去と決別し、自分の人生を見つけるまでの姿を鮮やかに描き出す。全米で発売後すぐにベストセラーとなった話題のデビュー作。ふたりの少年の成長を描いた大人のためのファンタジー小説。

面白く夢中になって読みました。「ホブゴブリン(小鬼)」なんて、ハリー・ポッターの様なファンタジーだったら苦手だなぁ、などと思いながら読み始めました。しかし現実世界に根付いた堅実な(という形容はどうかとも思いますが)ファンタジーです。ホブゴブリンと人間の子供が入れ替わる設定がファンタジーで、あとは少年の成長物語。この特殊な設定により、入れ替わりの事実を隠しとおさなければならないという緊張感があります。そして、ファンタジー特有の荒唐無稽な要素が物語をひっかきまわすこともなく、納得の展開。子供が入れ替わる残酷な悲劇よりも、与えられた状況でいかに生きるかが問われています。余韻のあるさわやかなラストでした。
[PR]
by umekononikki | 2011-07-27 09:25 |

老首長の国

f0149664_116280.jpg老首長の国
ドリス・レッシング著
青柳伸子訳

自らが五歳から三十歳までを過ごしたアフリカの大地を舞台に、入植者と現地人との葛藤、古い入植者と新しい入植者の相克、巨大な自然を前にした人間の無力を、重厚な筆致で濃密に描き出す。ノーベル文学賞受賞作家の傑作小説集!

14の短編集。どの物語も秀逸でした。アフリカの大地の匂いと、互いに理解できない人間関係に、満たされない思いを抱く人間の織り成す世界に、独特の味わいがあります。結局は互いの利害をいかに上手く調整できるかで、人間関係って成立しているのかもと思います。自分以外は全て他人なのだと、当然のことながら、これほど明確に提示されると、孤独で悲しさを感じます。その当然のことゆえに、お互いに満たしあえないと気付かないさまが、どこか滑稽。「わかっちゃいるけど、やめられない。」じゃないですが、そんな自嘲も含まれているようで、寂しさだけでは終わらないところが魅力なのでしょうか。どの物語の中にも、補いようのない根本的な相違があります。あまりに根幹の部分だけに、理解する以前の問題です。その根幹の部分の相違が硬いしこりとなり、肉体の奥深くにあるのに手触りで分かるような、人間に対する洞察力は素晴らしかったです。短編集ながら、1つの長編を読んだような充実した内容でした。
[PR]
by umekononikki | 2011-07-25 11:06 |

サヴァイブ

f0149664_8563921.jpgサヴァイブ
近藤史恵著

他人の勝利のために犠牲になる喜びも、常に追われる勝者の絶望も、きっと誰にも理解できない。ペダルをまわし続ける、俺たち以外には―。日本・フランス・ポルトガルを走り抜け、瞬間の駆け引きが交錯する。ゴールの先に、スピードの果てに、彼らは何を失い何を得るのか。

「サクリファイス」「エデン」に登場した人たちの短編集。短編集でも、やっぱり面白かったです♪様々な登場人物たちの視点で描かれた物語は、とても新鮮でした。そして、「サクリファイス」と「エデン」を読み返したくなります。どうもこのシリーズを読むと、自転車が欲しくなるんですよねぇ。「サクリファイス」の読後は、危うく買いそうになりました。天井から床にかけてつっかえ棒を2本たて、そこに自転車をひっかければ部屋に置いておけるぞと、具体的に考えたりもしました。それほどこのシリーズは、自身もさわやかな風になった気分にさせてくれます。(実際には、微塵も「さわやか」にはなっていないのですが。)これで自転車に乗れば、更に「さわやか」になれるかと思っちゃいます。(なれる訳ありません。)
内容は、もちろん我らが「チカ」の話もあり、脇役で登場する話もあり、登場しない話もありでしたが、やはり「チカ」が登場すると、読んでいてテンションが上がるのが分かります。しかし、チカ以外の人物も、本編では味わえなかった魅力的を感じました。勝負の世界の裏には、やはり誰もが努力し苦悩しているのですね。
しかしなにはともあれ、早く長編の続編が読みたいです。
[PR]
by umekononikki | 2011-07-22 08:56 |

智積院

f0149664_901770.jpg智積院

2011年7月16日、平安神宮前でフェルメールを観て、四条で食事しようと思ったら、祇園祭のお陰で人気のお店はどこも大行列でした。そこで七条まで京阪で移動。ハイアットリージェンシーにある「トラットリア セッテ」へ行きました。食事しながら、ここまで来たついでに「智積院」も観ようじゃないかという話になり、暑いながらももうひと踏ん張りすることに。

ここには有名な長谷川等伯の「楓図」があります。斜め向かいにある京都国立博物館で、2010年4月に開催された「長谷川等伯展」でも展示されていましたね。これが間近で、誰にも邪魔されず、かぶりつきで拝見することができました。息子・久蔵の「桜図」と並んであります。博物館で観た「楓図」は豪華絢爛でしたが、ここではあまりに間近で観られ、傷んだ部分が目に付きます。しかしその傷みも、時の流れの重みを感じさせます。そしてやはり「桜図」と並んでみると、迫力と感慨深いものを感じます。
「利休好みの庭」と伝えられた庭園は、非常に素晴らしく、しばし暑さを忘れるほどでした。案内によると、ツツジの咲く5月下旬頃から6月上旬が美しいようですね。
f0149664_903435.jpgそして田渕俊夫の襖絵。これが素晴らしかったです。白と黒の世界に、あらゆる感情が詰め込まれたような、抑えられない気持ちが溢れ出そうな、胸のつまる感情にかられます。嬉しいとか悲しいとかそういった具体的な感情ではなく、気持ちの高ぶりとでもいいましょうか、「心拍数の上がる絵だなぁ。」と感じました。
これまで何度となく京都国立博物館へは足を運んでいるにも関わらず、どうして智積院を訪れなかったのだろうと後悔しました。これからは、博物館とセットで訪れることになりそうです。
[PR]
by umekononikki | 2011-07-21 09:00
f0149664_9275165.jpgフェルメールからのラブレター展
京都市美術館

2011年7月16日(土)祇園祭の山鉾巡行の前日で、最高気温36.7度の酷暑の中、平安神宮前の京都市美術館へ。10時過ぎに到着。時間も早かったせいか、祇園祭で敬遠されたせいか、人は少なめで良かったです。それでもこの日、入場者数が早くも5万人を超えたのだそうです。6月25日から始まったのですから、平均すると1日2千人を超える人たちが来場したのですね。凄いわ。

展覧会は、「日常生活」「家族」「職業」「手紙」の4つのテーマに分けられていました。
日常生活を題材にしたものでは、飾らない日常生活とはいえ「こんなことまで描いちゃうの。」と驚いた作品もありました。解説によると欲望のままに生きることへの戒めとありますが、いつの時代もどこの国でも同じような過ちを犯すものなのだなと、当時を身近に感じました。家族の肖像では、自然なポーズのものから不自然なものまであり、並べてみるととても面白かったです。職業や学術をテーマにした作品では、当時のオランダの勉学に対する熱心さが伝わってきます。また、当時の識字率の高さに繋がり、最後のテーマ「手紙」へとなります。
最後の部屋では今回のメイン、フェルメールの「手紙」に関する3作品が展示されています。「フェルメールからのラブレター展」ではありますが、どれも「ラブレター」を書いたり読んだりしているようには見えなかったなぁ。「手紙を書く女」は明るい黄色の服に、明るすぎる微笑み。「こんな楽しいことがあったの。」と、友人に手紙を書いているよう。「手紙を読む青衣の女」は、妊婦ではありながら愛する夫からの手紙というより、役所からの通知でも読んでいるかのよう。もうすぐ子供が生まれる幸せな生活の、何気ない一場面。「手紙を書く女と召使い」では、急いで知らせなければならないからすぐにこの手紙を届けてと、召使いを待機させているよう。
それらの想像は、描かれている人物の表情やポーズ以外に、窓から差し込む光の違いからも大きく影響されています。黄色い服の少女には、明るい光が、青衣の女性には、子供がお腹にいる満たされた優しい光が、召使いと共にいる女性には、ライトの様なきつめの光があたり、それぞれ違った雰囲気を演出しています。この光の差が非常に面白く、3作品を並べて観れたからこそ!贅沢で大満足の展覧会でした。
[PR]
by umekononikki | 2011-07-20 09:28 | 展覧会
f0149664_9331679.jpg葉桜の季節に君を想うということ
歌野晶午著

ひょんなことから霊感商法事件に巻き込まれた“何でもやってやろう屋”探偵・成瀬将虎。恋愛あり、活劇ありの物語の行方は?そして炸裂する本格魂。

こういうトリックもありですよね。とにかく楽しめました。様々なエピソードが一つになる快感もさることながら、一気にシンデレラの魔法がとけてしまうようなラストが圧巻。
しかしこのトリックのお陰で、非常に感想が書きづらいですね。読んだ人同士で、「すっかり騙されちゃったよね~。」なんて、ネタバレ全開でおしゃべりしたい気分です。それほど鮮やかなラストでした。
近年「ミステリー」というジャンルが流行りの様ですが、そろそろ「ミステリー」という大きな枠から細分化が必要になってきた様に思います。単なる謎解きから、多種多様な謎とトリックが生まれていますよね。でも細分化すると、トリックの内容を表示したも同然ですか。やはり「ミステリー」って大きな枠で、ざっくり分類しているだけの方が好都合。そんな「ミステリー」の枠を超えた「ミステリー」を味わえた物語でした。
[PR]
by umekononikki | 2011-07-19 09:33 |

イルストラード

f0149664_93831100.jpgイルストラード
ミゲル・シフーコ著
中野学而訳

2002年2月、ニューヨークで活動を続けてきたフィリピン人亡命作家クリスピンが、ハドソン川にて死体で見つかった。彼の書斎からは、近代フィリピンを牛耳ってきた歴代の富と権力の内情を暴いた、執筆中の小説の原稿が消えていた。クリスピンの若き教え子ミゲルは、謎めいた死の真相を解明すべく、母国フィリピンへと旅立つ。やがて師の人生を追うことの本当の意味に気づきはじめたミゲルは、迷宮を抜けだす道を求めて、飛行機で離島へ向かう…。

「夏に読んでね。」と言わんばかりの鮮やかな表紙。内容はその反対で、混迷のインドネシアを描きだしています。クリスピンの作品やネットの書き込み、主人公のミゲルによるクリスピンの回想録と様々な断片が次々と繰り出されます。それぞれがバラバラにちりばめられたようで、ラストには繋がるのかな・・・と思いつつ読み進めました。ミステリーのような謎解きではなく、迷宮に迷い込む様な、どこを歩いているのか解らなくなるような感覚。慣れるまでは読み辛かったです。息苦しいまでの迷宮は、この猛暑の中では辛かったんですもの。断片が一つにまとまる構成は、最近よくみますが流行りなのでしょうか。それでもこの物語の、この感覚は新鮮でした。
政治的にも経済的にも混迷するインドネシア。物語中の混迷ぶりから、この国への興味が湧くとともに、物語としてもどこに着地するのだろうと次第に飲み込まれていきます。ラストのオチは途中で予想できるものの、そこに至る過程がお見事。さらに、その迷宮から抜け出せた爽快感。楽しめました。
[PR]
by umekononikki | 2011-07-15 09:38 |
f0149664_946739.jpgレンブラント
 光の追求/闇の誘惑

名古屋市美術館

2011年7月9日(土)、豊田市美術館を後にし、名古屋市美術館へ。この日は、「酷暑」と言う表現が過剰じゃない位の暑さ。美術館は涼しいだろうと期待が高まります。豊田市美術館では、写真を撮ることを忘れたので、ここでは忘れないように携帯を握りしめながら歩いて行きました。銀色の丸い球体が象徴的な科学館を横目に、美術館に到着。

「天才が極めた明暗表現」というサブタイトル通り、レンブラントは天才ですね。内容の多くががモノクロの版画が占めるにも拘らず、非常に楽しめた内容でした。しかし、少し後悔もしました。版画について勉強してから行けば良かったと。会期は9月4日まで。ぜひもう一度足を運びたいと思います。
そこで版画について少し。エッチングとドライポイントについて。エッチングは、化学薬品などの腐食作用を応用した表面加工の技法。銅板を防腐剤で一面にコーティングしたのち、ニードルで線描し、酸に浸して腐食させる技法。ニードルで防腐剤をはがした部分が凹部となります。対してドライポイントは、先端が鋼鉄の針やダイヤモンドがついた針などを使い、銅板に直に彫って描画する凹版法。彫られた線は均一ではなく、針で押された銅のささくれやまくれなど、独特のタッチになります。
レンブラントはエッチングを好んで製作しましたが、様々な技法を併用し表現の可能性を拡大した作家です。エッチングが多いのかと思いきや、多くの展示作品がドライポイントだったように記憶しています。原板も展示されています。更に、各ステートの作品が見比べられます。その変化には驚かされるばかり。和紙や西洋紙にと紙にもこだわります。それらの違いが並べて展示されているだけでも面白いのに、作者がレンブラントとなると、こんな満たされた展覧会は二度とありませんよね。見逃してはいけません。
そうそう、忘れてはいけません。油彩画も素晴らしい作品ぞろい。ポスターにもなっている「書斎のミネルヴァ」。光のあたっている方から、本の上の手元の表現がたまらないものがありました。他にも「光と闇」のテーマに沿った作品で、これだけの満足を得られるなんて!繰り返しますが、見逃せません。
貴重な版画の数々。管理も大変なようで、会場は期待以上に涼しかったです♪作品保護と貸出条件により温度・湿度・照明が管理されているので、理想的と感じられないとの案内もあり、人によっては寒いくらいだったかもしれません。節電の中これだけ空調が効いている場所は珍しく、この夏、名古屋で最も涼しい場所になるのではないでしょうか。
併せて常設展示も拝見。フリーダ・カーロやキスリング、田渕俊夫と見どころのある内容でした。
なにはともあれ、万障繰り合せてもう一度足を運びたいと思います。
[PR]
by umekononikki | 2011-07-13 09:52 | 展覧会