展覧会と本と韓国ドラマと時々K-POPかな・・・。

by 梅子

<   2012年 07月 ( 17 )   > この月の画像一覧

f0149664_22122960.jpgアラーの神にもいわれはない―ある西アフリカ少年兵の物語
アマドゥ クルマ 著
真島 一郎 訳

冷戦後アフリカの最悪の紛争、リベリア・シエラレオネ両国の内戦の惨劇、チャイルドソルジャーの生きる痛ましい現実を、闘うグリオが破格の文体をもって告発する。2000年ルノドー賞、高校生のゴンクール受賞作。

寓話なのですが、事実を基にしていることはいうまでもありません。そして一人の少年の物語ですが、現実はこのような子供が多く存在する事実もあります。西アフリカの悲惨な現実を、あたかも他人事のように淡々と語る主人公の少年。巻末の訳者解題にある「隣の子」のエピソードで、その言語を絶する痛ましさが胸に突き刺さりました。寓話とはいえ、実在の団体名や人名が登場し(もちろん国名も。そりゃ舞台は現実世界なのですから!)、今では過去の人となってしまった方もいらっしゃいました。まさに激動の地域であることを実感させられます。混沌としたこの地域に対し、できることをしなければという思いで本を閉じました。
[PR]
by umekononikki | 2012-07-30 22:12 |

ヴァインランド

f0149664_19542916.jpgヴァインランド
(池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 第2集)
トマス・ピンチョン 著
佐藤 良明 訳

1984年、ある夏の朝。北カリフォルニアの山中で14歳の娘とふたり、ジャンクにクレイジーに暮らすヒッピーおやじゾイドの目覚めから物語は始まる。ゾイドを執拗に追う麻薬取締官、娘を狙う連邦政府、その権力の魔の手から逃れながら、母探しの旅に出る娘。次々と出現する登場人物を巻き込んで、仕掛けに満ちたピンチョン・ワールドは時のうねりの中を突き進む―ギャグ満載のポップな装いの下に、輝けるアメリカを覆う呪われたアメリカ、官憲国家の狂気を、繊細に重厚に、ときにセンチメンタルに描き出す。名訳をさらに磨きあげ、注釈も全面改訂。

初ピンチョン。難解なイメージから、これまで手をつけることをためらわれた作家です。なんとなく「夏だし~。(新しいことにチャレンジしたくなる季節かなと・・・。)」位の理由で、図書館で借りてみました。
いや~、たまりません。読み始めると、グルグル回るジェットコースターに乗った気分で、あっという間に読了。アメリカに対する風刺的な内容ですが、この物語、痛烈な批判以上に効きますよね。視点がクルクル変わったり、時間軸がグルグル回ったりしながら、日本も舞台として登場し、様々な要素がてんこ盛り状態でありながらも、このまとめよう!サブカルチャーや政治の歴史の知識が乏しい私でも注釈に助けられながらも、やはり理解できない部分も多かったにもかかわらず、何がなんだか分からない面白さ。だって、ジェットコースターの面白さなんて、言葉で表現すればするほど陳腐でしょう?この感覚、読んで見なきゃ分かりません。
[PR]
by umekononikki | 2012-07-27 19:54 |

ディビザデロ通り

f0149664_19415958.jpgディビザデロ通り
マイケル オンダーチェ 著
村松 潔 訳

血のつながらない姉妹と、親を殺された少年。一人の父親のもと、きょうだいのように育った彼らを、ひとつの恋が引き裂く。散り散りになった人生は、境界線上でかすかに触れあいながら、時の狭間へと消えていく。和解できない家族。成就しない愛。叶うことのない思いが、異なる時代のいくつもの物語を、一本の糸でつないでいく―。ブッカー賞作家が綴る、密やかな愛の物語。

「コラージュのような」物語の、その切り取られた断片がどれも魅力的。一見すると意味のないものばかりを詰め込んだ箱でも、実は全てが大切なものばかりの宝箱のよう。それらをたどってゆくと、全てが思い出で繋がってゆくような、消えることのない思いがあるんだと安心させられるような暖かさがありました。思い出は人の心の中にしか存在しない物。しかし反面、形ある個人が消えてしまっても、形のない思い出は、誰かの心の片隅に残り受け継がれてゆくのかもしれません。そんなことを想像させられる、素敵な物語でした。子供のころ聞いた昔話のように、結末がどうなったか思い出せないような、結末よりもその過程が面白く印象に残った、そんな懐かしさを感じます。
[PR]
by umekononikki | 2012-07-25 19:42 |

無知

f0149664_22272920.jpg無知
ミラン・クンデラ 著
西永 良成 訳

知らなかった。祖国を永久に喪失しようとは…「わたしたち、プラハで知り合いになったのでしたね?まだ、わたしのことを憶えていらっしゃる?―もちろん」亡命していた男と女はパリの空港で再会した。まだ若く魅力的な女イレナはパリから、かつてのプレイボーイでもはや初老の獣医ヨゼフはデンマークから、20年ぶりの故郷へ「帰還」する旅だった。そしてそれぞれの故郷に帰っていくふたりを待ち受けていた残酷で哀切極まりない運命とは…。

亡命と故郷への帰還。決定的な瞬間に不在であったことが、永遠の喪失に繋がるむなしさを感じました。タイトルの「無知」は、なんだかしっくりこなかったなぁ。「亡命」の真の意味を理解していなかった「無知」なのでしょうか。政治的情勢が予想できなかった「無知」なのでしょうか。どちらも違う気がします。日本人には分かりえない「無知」という感覚が、亡命や祖国の喪失にはあるのかもしれません。リズミカルに物語りは進行するのは気持ちよかったけど、少し物足りなかったかな。
[PR]
by umekononikki | 2012-07-23 22:28 |
f0149664_1973321.jpg灯台へ/サルガッソーの広い海 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 2-1)

灯台へ
ヴァージニア・ウルフ 著
鴻巣 友季子 訳

灯台を望む小島の別荘を舞台に、哲学者の一家とその客人たちの内面のドラマを、詩情豊かな旋律で描き出す。精神を病みながらも、幼い夏の日々の記憶、なつかしい父母にひととき思いを寄せて書き上げた、このうえなく美しい傑作。新訳決定版。

10年を隔てた2日間を、こんなにも効果的に結びつけちゃうところが凄いなと。10年という歳月を隔てて、本来ならばその間の変遷が物語りになるところを見事にすっ飛ばしながらも、家族と家族にまつわる人々のつながりを描き出しています。いや、10年をすっ飛ばすことが、非常に効果的に活用されているのでしょうね。とにかくそれに驚かされました。存在と思念と記憶、そして時間。それらの渦に飲み込まれたような、濃厚な時間を味わいました。


サルガッソーの広い海
ジーン・リース 著
小沢 瑞穂 訳

奴隷制廃止後の英領ジャマイカ。土地の黒人たちから「白いゴキブリ」と蔑まれるアントワネットは、イギリスから来た若者と結婚する。しかし、異なる文化に心を引き裂かれ、やがて精神の安定を失っていく。植民地に生きる人間の生の葛藤を浮き彫りにした愛と狂気の物語。

解説を読んで、なるほどと感じました。「ジェイン・エア」の登場人物から、別の物語りをつくりだしています。しかも「ジェイン・エア」とは正反対の、暗く救われない物語として・・・。植民地で生まれた主人公の自分で自分に足枷をはめてしまったかのような救われなさが、植民地の全ての人々のジレンマを代弁しているように感じました。奴隷制度や生まれた土地。自分の中に流れる血。全て自ら望んで生まれてきたわけではないのに、逃れることのできないしがらみを二重にも三重にも巻きつければ、その宿命から守ってくれるかのようなやるせなさを感じました。あまりの救われなさが印象的でした。
[PR]
by umekononikki | 2012-07-22 19:07 |
f0149664_21501932.jpgブルックリン・フォリーズ
ポール・オースター著
柴田元幸訳

幸せは思いがけないところから転がり込んでくる──傷ついた犬のように、私は生まれた場所へと這い戻ってきた──一人で静かに人生を振り返ろうと思っていたネイサンは、ブルックリンならではの自由で気ままな人々と再会し、とんでもない冒険に巻き込まれてゆく。9・11直前までの日々。オースターならではの、ブルックリンの賛歌、家族の再生の物語。感動の新作長編。

まだまだオースター初心者の私ですが、「流石、オースター!」と言わせて下さい。幸せな読書の時間を味わいました。
人生ってコロコロ転がる石のよう。それでも転がっているうちに研磨させて、ピカピカになれれば素敵だなと感じながら読んでいました。「人生山あり谷あり」とはよく言ったもの。しかもその谷が、想像を絶するほどの断崖だとは・・・。
阪神淡路大震災を経験したものの、その記憶は年々風化していきます。あの震災が起こった当時は、震災前と後の世界は違う世界だったのに。9・11も昨年の大震災も、起きる前と後とでは世界が変わってしまうほどの衝撃です。好むとも好まざるとも関わらず、昨日までの価値観が翌日には大きく変わってしまうことは、人間の短い一生であっても誰もが経験するものなのでしょうか。阪神淡路大震災の記憶は、自身が年齢を重ねるごとに、価値観の転換を強いられたことより、昔の思い出的なレトロな感傷に変わりつつあります。いつまでも当時の衝撃を、新鮮なまま心に留めておくことは辛すぎることですし。
そんな経験からか、物語のラストはこれまで語られてきた幸福が、過去の思い出のように一気に色あせるかのような衝撃がありました。登場人物たちには、深い傷となって心に刻まれるのでしょうが、そこからもいつかは再生し、過去の記憶の一つとなってゆくように感じました。
[PR]
by umekononikki | 2012-07-20 21:50 |
f0149664_2011059.jpg知っておきたい日本の神話
瓜生中著

「イザナギ・イザナミの国造り」「アマテラスの岩戸隠れ」「因幡の白兎」「ヤマトタケルのオロチ退治」など、子供のときから知っているはずなのに、意外にあやふやな神話の世界。誰でも知っておきたい神話を天地創造神話、古代天皇に関する神話、神社創祀の神話などに分類して紹介しました。やさしい現代語訳で複雑な神話の内容がすっきりわかるので、神々の活躍、狼藉、受難など、多岐にわたる神話の世界を心ゆくまで楽しめます。

「古事記」編纂から1300年を迎え、様々な本や雑誌が出てますよね。何冊か読みましたがやっぱり名前がややこしい。何冊目かのこの本で、ようやくその名前にも愛着を覚えだしました。が、まだまだですね。なんだってこんなややこしい名前なんだと思いつつも、このややこしさが神々としてのありがたさを増しているのかもしれません。そんな神様や古代天皇に関する物語は、現代にも十分に通じる部分があるのだと、物語の合間に挟まれるコラムに感心させられました。古事記や日本書紀の内容は予習済みだったのですが、それ以外の作者のコメントが興味深くて一読の価値がありました。
[PR]
by umekononikki | 2012-07-16 20:01 |

狙われたキツネ

f0149664_11133823.jpg狙われたキツネ 新装版
ヘルタ・ミュラー 著
山本 浩司 訳

チャウシェスク独裁政権下のルーマニアを舞台に家宅侵入、尾行、盗聴。つきまとう秘密警察の影に怯える日々。そうしたなかで、ひとりの女が愛にすべてを賭ける。しかしそれには、親友との友情を引き裂くものだった…ノーベル文学賞受賞!祖国を追われた女性作家ヘルタ・ミュラーが描くチャウシェスク独裁政権下のルーマニアを舞台に繰り広げられるあまりに切ない物語。

断片的に書かれる様々な場面が、徐々に物語の形になっていく構成が面白かったです。チャウシェスク独裁政権下の希望を奪われた世界が、映像を見ているかのように鮮明に描かれている様に息苦しさを覚えました。常に誰かに見張られているような、何をしても堂々巡りで這い上がることもできない絶望を感じます。独裁政権が倒れた時のニュースは衝撃的でしたが、その一方でこのような実情だったのだと、ニュースで知る以上のことを感じることができました。「あとがき」にもありましたが、経験した者しか表現できないリアリティがあるからなのでしょうね。そして、ラストの言葉が非常に印象的。この独裁政権が、どれほど深く国を蝕んだかが胸に突き刺さるようです。
[PR]
by umekononikki | 2012-07-15 11:13 |

ブーベの恋人

f0149664_19281594.jpgブーベの恋人
カルロ カッソーラ 著
菅谷 誠 訳

第二次世界大戦末期イタリア。小村で過ごす少女マーラのもとを、兄の“同志”だったという青年ブーベが訪れる。まっすぐで素朴なブーベに次第に惹かれていくマーラ。彼もまたマーラの美しさに魅せられていた。離れた地に住む二人は、手紙のやり取りをするようになる。やがて二人は婚約するが、離れ離れの暮らしは続いた。ある夏の日、何の前触れもなく、ブーベが現れた。ブーベに起きた事件とは―そしてマーラの運命は―愛を信じた女性の、ひたむきな姿を描いた切ないラブロマンス。イタリア文学の最高峰・ストレーガ賞受賞作。

あとがきによると、映画はルイジ・コメンチーニ監督、主演はクラウディア・カルディナーレ(マーラ)、ジョージ・チャキリス(ブーベ)で、日本では1964年に公開されたそうです。ストレーガ賞受賞のラブロマンス。イタリアでは、高校時代の授業のテキストにもなるほどです。
ストレーガ賞受賞とあり期待しすぎたせいか、純愛物語のお手本の様な展開で、素朴といえば素朴ですが、少し物足りない感じがしました。何より登場人物たちに共感できなかったのよね。この作品、半世紀も前に書かれた物語なのですから、無理もないといえばその通りなのですが。物語の筋や登場人物たちより、物語の時代背景が興味深かったです。政治的なことはもちろん、当時の人々の生活ぶりの方に目がいきます。パラシュートの生地でブラウスを作ったり、ハイヒールを町まで買いに行ったりと、主人公の少女が小さな農村の出身のためか、現代人から見れば些細なことに優越感を覚える辺りが素朴ですよね。
まぁ、なんだかんだ言っても、マーラとブーベの再会のシーンは印象的でした。後半ほとんど登場しなかった分、ブーベの言葉に胸を打たれました。
[PR]
by umekononikki | 2012-07-13 19:28 |

久保 修 切り絵の世界展

f0149664_9381348.jpg画業40周年記念 久保 修 切り絵の世界展
~紙のジャポニスム~

ジェイアール京都伊勢丹
7F 美術館「えき」KYOTO

2012年7月10日(火)、京都国立近代美術館で「KATAGAMI Style」を観た後、JR京都伊勢丹へ足を延ばしました。私の行くタイミングが悪いのか、いつ行っても混んでいる印象のある美術館。いえいえ、展覧会の内容が良いのと、なんといっても料金が安い!今回もICOCAで決済すると500円でした。
さて、作品は記念切手では観たことがありましたが、実際の作品はこれが初めて。切手以外にも朝日新聞等に掲載されていたりと、これまで知らないうちに眼にしていたのかもしれません。実際の作品は迫力があり、やはり印刷されたものとは違い見ごたえがあります。。従来の切り絵のイメージを一新した作品は、一体どうなっているの?と、画面に近づいて確認したくなります。「型紙」を観た後だったので、その繊細さや斬新さは、やっぱり日本人で良かったと感動してしまいます。大げさかもしれませんが、政治や経済で行き詰まりを感じる中、日本人として世界に胸を張れることがまだまだあるのだと元気が出ます。作品は日本の風景や食べ物、そして世界の風景までもが、およそ切り絵とは思えないような雰囲気を出しています。いやー、面白かったです♪
[PR]
by umekononikki | 2012-07-12 09:38 | 展覧会