展覧会と本と韓国ドラマと時々K-POPかな・・・。

by 梅子

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祖母の手帖

f0149664_16384848.jpg祖母の手帖
ミレーナ・アグス著
中嶋浩郎訳

1950年秋。サルデーニャ島から初めて本土に渡った祖母は、「石の痛み」にみちびかれて「帰還兵」と出会い、恋に落ちる。いっぽう、互いにベッドの反対側で決して触れずに眠りながらも、夫である祖父には売春宿のサービスを執り行う。狂気ともみまごう人生の奇異。孫娘に祖母が語った禁断の愛の物語。遺された手帖と一通の手紙が、語られなかった真実をあきらかにする。ストイックさとエロティックさが入り混じった不可解な愛のゆくえと、ひとにとっての「書く」という行為の気高さをゆったりとした語り口で描きだす奥行きの深い物語。

月並みですが、様々な愛の形があるのだなと。そんな愛に満たされた良質な物語でした。人それぞれに愛し方が違い、人それぞれに愛されたかも違います。だからこそ、ぴったり当てはまったときには激しく燃え、違うからこそ気付かれない愛もあります。そんな愛の両面が、静謐に描かれています。「愛」という言葉も普段なら照れくさくてあまり使いませんが、この物語を読んだ後では照れも吹き飛ぶ豊かさを感じています。長くは無い物語ですが、奥行きのある愛があります。これは、かなり好みかも。
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by umekononikki | 2013-01-30 16:39 |

青い脂

f0149664_2258589.jpg青い脂
ウラジーミル・ソローキン著
望月哲男、松下隆志訳

2068年、雪に埋もれた東シベリアの遺伝子研究所。トルストイ4号、ドストエフスキー2号、ナボコフ7号など、7体の文学クローンが作品を執筆したのち体内に蓄積される不思議な物質「青脂」。母なるロシアの大地と交合する謎の教団がタイムマシンでこの物質を送りこんだのは、スターリンとヒトラーがヨーロッパを二分する1954年のモスクワだった。スターリン、フルシチョフ、ベリヤ、アフマートワ、マンデリシュターム、ブロツキー、ヒトラー、ヘス、ゲーリング、リーフェンシュタール…。20世紀の巨頭たちが「青脂」をめぐって繰りひろげる大争奪戦。マルチセックス、拷問、ドラッグ、正体不明な造語が詰めこまれた奇想天外な物語は、やがてオーバーザルツベルクのヒトラーの牙城で究極の大団円を迎えることとなる。現代文学の怪物ソローキンの代表作、ついに翻訳刊行。

ああ、ああ、やっとの思いで読了。これに感想を書けって言われても、すぐには言葉が見つかりません。例えば、出鱈目な絵でもいいからと白い紙を渡され、何も見ずに出鱈目な絵を描くほど、頭を抱えることは無いような。そんな出鱈目な荒唐無稽な世界、しかもエログロな演出で、見事に完成された物語に拍手。しかし読み終わっても、この本の魅力を十分には理解でできていません。だってあまりに物語が突飛過ぎて、私のキャパシティーを越える無茶苦茶な世界だったんですもの。で、面白くなかったかって?そりゃ、・・・。面白いとかつまらないを飛び越えて、この世界を味わうことに必死になるほど、既成の評価でな収まらない領域であることには間違いありません。人には進められません。あくまで興味がある方は自己責任で読んでください。
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by umekononikki | 2013-01-29 22:59 |

サイン

f0149664_1923067.jpgサイン
2011年 全20話
出演:パク・シニャン、キム・アジュン、チョン・グァンリョル、オム・ジョウォン、チェ・イハン 他

人気男性アイドル歌手がコンサート中に殺害。その裏には黒い影が・・・。真犯人は誰なのか?司法解剖医が、事件の真相に迫ります。と、言ったところでしょうか。様々な事件が挿入されつつも、物語の軸をなすアイドル歌手殺害事件も徐々に解明されていきます。
パク・シニャンですね。この人「パリの恋人」で、あんなにも素敵に見えたのが不思議といつも思っちゃうんですよね。今回はまじめな法医学官の役どころ。様々な殺人事件の謎に迫り、緊張感溢れる展開に目が離せません。少々大げさな演技に、妙な説得力を感じさせるチョン・グァンリョル氏も、いい演技を見せてくれます。
まぁ、ぶっちゃけ、力技でねじ伏せ事件解決ってのもあったわけですが、個人的には楽しめたドラマでした。いろいろな方の感想を読んでみると、あの終わり方には賛否両論あるようですが、私は寂しいながらも良い終わり方だったのではないかと思います。だって、パク・シニャンとキム・アジュンより、刑事と検事のチェ・イハンとオム・ジウォンの二人のほうが好きだったんですもの。だから二人が幸せならいいのよ~。ああ、面白かった。
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by umekononikki | 2013-01-28 19:23 | 韓国ドラマ

新春の雅楽~東京楽所

f0149664_21444289.png新春の雅楽~東京楽所
~悠久の響きと煌びやかな舞~

[演奏]東京楽所

2013年1月26日(土) 14:00 開演 13:00 開場
ザ・シンフォニーホール


プログラム

【第1部】 管弦
 平調音取(ひょうじょうねとり)
 催馬楽(さいばら)~更衣(ころもかえ)
 越天楽(えてんらく)
 陪臚(ばいろ)

~休憩~

【第2部】 舞楽
 春鶯囀一具(しゅんのうでんいちぐ)

雅楽。それは未知の世界でした。日本文化ブームの私にははずせないコンサート(!?と、いう表現は正しいのかしら?)なのですが、西洋の音楽に慣れてしまった多くの現代人にはなじみが薄いもの。ふらっと出かけて理解できるのかしらと心配半分、楽しみ半分で出かけました。入り口で公演プログラムを頂き、解説を読む。頭では理解できても、なんだかしっくりこない感じです。そんな心配も、公演が始まると講演内容のお話があり解消されました。そのお話の中で感心したことは、雅楽は世界最古のオーケストラだったこと。改めて日本人であることに誇りを感じます。楽器についても、元々25種類あったものを8種類にまとめ上げたそうです。その元の25種類の楽器は、奈良の正倉院に納められているとか。毎年行われる「正倉院展」にも展示されているようですね。私も1度行ったことはありますが、「世界一混雑する展覧会」といわれるだけに、その混雑振りは婦人服のバーゲン会場のよう。でもそう言われると、今年の正倉院展には行ってみようかなという気分になりました。他に平等院の「平等」という概念や長谷寺の「序破急」に関するお話など、興味深い内容で勉強になりました。
さて肝心の演奏。やはり多くの場合屋外で演奏されるだけに、ホールでの演奏では音が響きすぎな感は否めません。とりわけザ・シンフォニーホールは残響2秒と、クラシック専用のホールなのですから。やはり雅楽の楽器は屋外での演奏に耐えうるようなものですね。しかし、繊細でありながら大胆な音色に驚かされつつその素晴らしさを感じました。舞楽も1時間弱を休むことなく演奏し舞うんですから、それは見ごたえのあるものでした。バレエのように身体能力で踊るのではなく、天からの操り人形のように天の意思で舞うその様が神秘的でした。
常に留まることを知らない川の流れのような現代社会で、一時、時間を止めて、神様たちのいる世界を垣間見たような雰囲気を堪能。関西でも雅楽を聴く機会は多くあるのですが、これまで行って楽しめるのか分からず足を運ぶことはありませんでした。今回の公演でその素晴らしさに触れ、今後は機会があれば是非行ってみようと思います。
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by umekononikki | 2013-01-27 21:45 | コンサート

狂気

f0149664_236575.jpg狂気
ハ・ジン著
立石光子訳

山寧大学の楊教授が、脳卒中で倒れた。夫人はチベットに赴任中、娘の梅梅は北京で医学院受験に追われている。愛弟子で梅梅の婚約者でもあるぼくは、学部を取り仕切る彭書記から教授の付き添いを命じられた。病床で教授はうわ言を口走り、高潔で尊敬を集める人とは思えぬその言葉にぼくは驚く。どうやら経費の問題、不倫の疑い、何者かにゆすられている節もあった。意識の混濁する教授に翻弄され、迫る大学院入試の準備もできず、ぼくの苛立ちは募る。どんなに学問を究めても役人より格下でしかないと、学者の人生を悔いる教授の激しい憎悪と惨めな姿を目にするうちに、ぼくは自分の進路に疑問を抱く。そんなぼくを梅梅はなじり、去っていく。折りしも北京では自由を求める学生が続々と天安門広場に集まっていた。すべてを失ったぼくは北京へ向かうが…。全米図書賞受賞作家が天安門事件を題材に、非情な現実に抗う人間の姿を描く渾身の書。

これは面白かった。病床での教授のうわ言に翻弄される主人公は、傍から見れば奇妙な光景。正気では語ってくれなかったであろう教授の言葉は、正気じゃないだけに真に迫るものがあるってところもなんだか奇妙。そんな奇妙な設定ながら、物語は緊迫感があり、何か不穏は動きが感じられます。舞台は天安門事件の頃の中国。当時の中国の実情を垣間見るかのような、大学や病院、農村と北京、学生の進路などが生々しく描かれており興味深く読みました。そもそも失礼ながら、日本に生まれ育った私には中国そのものが狂気の世界に感じます。莫大な人口に広大な国土、一党独裁体制に共産主義、加えて資本主義経済が両立するさまは、理解を超えています。ああ、話がそれましたね。生きることの喜びや苦しみを味わった教授の言葉は、たとえ狂気の中にあっても一人の青年にとっては真実の言葉になったのですね。主人公を取り巻く国や規制概念など全てのしがらみから解き放たれるような、希望を感じるラスト。面白かったです。
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by umekononikki | 2013-01-26 23:07 |
f0149664_1852057.jpg江戸絵画入門―驚くべき奇才たちの時代
(別冊太陽 日本のこころ 150)
河野元昭 著

江戸時代の絵画を、分かり易い分類で解説されていて理解が深まりました。各章ごとにその専門家が文章をつけているのですが、アカデミックに偏りすぎず、著者のどちらかというと個人的な見解も交えながらの、素人にも楽しめる内容でした。確かに江戸時代は、日本の美術史の上でピークといってもいいほどの作品が誕生する時代でもありますよね。そこに著者の思い入れも混じった解説がついて、楽しみながら読むことができました。学生時代の美術の時間も、作品を制作するだけでなく、こんな楽しめる解説もあればいいのになと感じました。(いや、あったのかもしれませんね。私が寝てただけかも・・・。)何はともあれ、日本の美術は素晴らしい!観ても読んでも楽しめる内容でした。
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by umekononikki | 2013-01-19 18:52 |

いちばんここに似合う人

f0149664_1833248.jpgいちばんここに似合う人
ミランダ・ジュライ著
岸本佐知子訳

孤独な魂たちが束の間放つ生の火花を、切なく鮮やかに写し取った16の物語。
水が一滴もない土地で、老人たちに洗面器一つで水泳を教えようとする娘(「水泳チーム」)。英国のウィリアム王子をめぐる妄想で頭がはちきれそうな中年女(「マジェスティ」)。会ったこともない友人の妹に、本気で恋焦がれる老人(「妹」)―。孤独な魂たちが束の間放つ生の火花を、切なく鮮やかに写し取る、16の物語。カンヌ映画祭で新人賞を受賞した女性監督による、初めての小説集。フランク・オコナー国際短篇賞受賞作。


孤独とか疎外感に満ち溢れ、人間って結局は孤独な生き物なんだと、寂しさに酔いしれる気分になりました。そもそも自分が自分自身のことを理解しているかといえば、そうでもなかったりするんだから・・・。孤独は、社会からの疎外感だけでなく、自分が自分に抱くものもありますよね。上手くいえませんが、体や心や理性や行動などなど、自身の全てが上手く統制を取れた状態ではなくなったときなどがそうかもしれません。そんな何かに裏切られたような喪失感と、突き刺さるような孤独のファンタジーの世界って感じを受けました。「水泳チーム」「妹」「十の本当のこと」「モン・プレージュ」「あざ」が好み。面白かったです。
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by umekononikki | 2013-01-18 18:34 |
f0149664_15153048.jpg木村伊兵衛―人間を写しとった写真家
(別冊太陽 日本のこころ)
田沼武能 監修

日本写真界を代表する木村伊兵衛(1901-74)の生誕110年記念号。厳選された200点以上の写真をジャンル別に構成し、詳細な評伝と初公開のヴィンテージ・プリントを収録。

素人の私が言うのもなんですが、好きな写真家。もともと絵画を美術館で観ることは多かったのですが、写真となると全く興味が無かったんですよね。そんな折、京都の国立近代美術館で何かの展覧会に足を運んだときに、同時開催していた「アンリ・カルティエ=ブレッソン展」を観て開眼したんですよね。写真も素晴らしいと。そこから横のつながりで木村伊兵衛にたどり着きました。たどり着いたというより、横に移動しただけかも。ブレッソンもいいのですが、木村伊兵衛のほうが日本人として共感できる分、素晴らしく感じます。写真を堪能すると同時に、その人となりも知ることができて興味深い内容でした。選りすぐりの写真がならび、とてもお得な1冊。
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by umekononikki | 2013-01-17 15:15 |

双鳥の尸解

f0149664_10543417.jpg双鳥の尸解
志賀姫物語
泉竹史著

破戒の苦悩を脱し法の王たらん―魑魅魍魎が暗躍する平安京にもたらされた密教の颯爽たる風と息を顰めて相伝されてきた道教を融合せんとした青年僧智泉と志賀姫の流離譚。第12回歴史浪漫文学賞創作部門優秀賞受賞。

う~ん、上記の紹介からイメージした物語とは違った感じがするんだけどなぁ。と言うわけで、よくある感じの紹介にしてみると。

814年。滝蔵寺の本堂で智泉という青年僧が倒れているのが見つかる。空海門での兄弟子・泰範が亡骸と対面するが、息絶えて尚ぬくもりを感じる遺体。そこから泰範が、過去を回想するように物語が始まる。

って感じでいかがでしょう?
そうなるとこの物語、ミステリーとしては物足りないのよねぇ。かといって、宗教的要素も薄いように思うし・・・。純愛物語?案外、これがしっくりくるかも知れません。泰範、智泉共に魅力的な人物像に引き込まれ、闇の世界が存在する平安京の雰囲気は堪能できました。欲を言えば、もう少し宗教的な解説をちりばめて欲しかったかな。空海や最澄あたりのことは知っていても、「道教」がいきなり出てくると、宗教に疎い私は突然物語が直角に方向転換したかのような印象でした。それでも闇はどこまで行っても闇なんだと、闇に飲み込まれた読後感はよかったです。
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by umekononikki | 2013-01-14 10:56 |

澄みわたる大地

f0149664_15245762.jpg澄みわたる大地
カルロス・フエンテス著
寺尾隆吉訳

外交官の子息として少年時代からアメリカ大陸の名だたる諸都市を渡り歩いた著者は、20代半ばでようやく母国に落ち着いた。彼は「余所者のメキシコ人」として、多様な人種と社会階級が混在する猥雑な大都市=メキシコ・シティに魅せられた。無名に等しい作家の初長編は、斬新な文学的実験、方言も俗語も歌も叫びも、そして沈黙すら取り込んだ文体、街中から/豪邸から/スラムから聞こえてくる複数の声の交響によって、「時代の感性」を表現し、人びとの心を鷲づかみした。

今通っている図書館に無かったので、初めてリクエストした本。嬉しいことに購入後、1番に読むことができました。
さて、感想です。細切れな断片と次々出てくる登場人物に、読み始めは少々辛かったかも。それでも徐々に物語らしくなってきて、何とか読了。物語が立ち上がってくる快感は薄いのですが、そのエネルギーの大きさには圧倒されました。とにかく多くの声・声・声!様々な世代に、様々な階級のひとたち。そんな、歴史の流れに翻弄されたと俯瞰的に見れないほどの、生々しい歴史の証人たちの断片が並びます。前後する時間の流れと多くの登場人物たちの混沌とした中からも、圧倒されるほどのエネルギーが内に秘められていて、未来という時間が保証されている希望を感じさせられるんだから。凄い物語でした。
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by umekononikki | 2013-01-13 15:25 |