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展覧会と本と韓国ドラマと時々K-POPかな・・・。

by 梅子

オラクル・ナイト

オラクル・ナイト_f0149664_117135.jpgオラクル・ナイト
ポール・オースター著
柴田元幸訳

重病から生還した34歳の作家シドニーはリハビリのためにブルックリンを歩き始める。不思議な文房具店を見つけ、そこで買ったブルーのノートに新しい物語を書きだすと…。美しく謎めいた妻グレース、ダシール・ハメットのエピソード、ガーゴイルのように動き出す物語の渦。ニューヨークの闇の中で輝くものを描き出す、感動の長編。

初ポール・オースターなんです。こんなに有名な作家の本を、これまで読んでこなかったなんて。トマス・ピンチョンならいざ知らず、抜群の読みやすさにもかかわらずです。中でも面白い作品を読もうと調べ、図書館に借りに行くと貸出中。再びその時の気分で面白そうな作品を選び、図書館へ行くと貸出中。縁遠い作家でした。それにしても、これまで読んでこなかった自分を責めたい!夢中に読みました。面白かったです。
作家自身の物語と、作家の書く物語、その物語の中に登場する「オラクル・ナイト」というもう一つの物語。様々な物語が重なる、多重構造になっています。「上手いなぁ。」と展開を噛みしめながら、意味ありげな出来事に世界が膨らみ、非常に楽しめました。何か悪い方向へ向かっていると分りながらも、怖いもの見たさを感じる、大人向けのおとぎ話のよう。多くの要素がたくさん詰まっている、芳醇な物語でした。満足です。
# by umekononikki | 2011-09-15 11:07 |

週末

週末_f0149664_912295.jpg週末
ベルンハルト・シュリンク著
松永美穂訳

かつて赤軍派テロを首謀した男が、恩赦を受けて20年ぶりに出所した。姉は郊外の邸宅を準備し、旧友たちを呼び寄せる。密告者は誰だったのかと訝る元テロリスト。遠い日の失恋に思いをめぐらすジャーナリスト。9.11テロについて考え続ける英語教師。旧友たちの和解を願う女性牧師。そして、邸宅に現れた謎の若者。やがて苦い真実が明らかになり、未来への祈りが静かに湧き上がる―。『朗読者』の著者による「もう一つの戦争」の物語。

元テロリストが刑務所から出所してからの、週末の3日間を描いた物語。この3日間の間に、元テロリストのもとに集まった人々の人生が詰まっている、濃厚な時間が素晴らしい。時間は心の傷を癒すと同時に、人々の間に深い溝を刻むもの。様々な異なる価値観を持つ人々の間に、居心地の悪さを拭えないまま終わってしまう週末。そこまでは良かったです。しかし、それぞれの正義や、それぞれの主義が交わることなく、煙に巻かれたような終わり方だったように思うんだけどなぁ。時間の濃厚さに対して、どこか焦点の合わないラストが勿体ない感じがしました。分解するでもなく、協調するでもなく、学校の同窓会でももう少し有意義な終わり方をするんじゃなかろうか・・・。元テロリストって要素や「9.11」が、無理やり過ぎだったのかもね。
# by umekononikki | 2011-09-13 09:01 |

パイの物語

パイの物語_f0149664_1247105.jpgパイの物語
ヤン・マーテル著
唐沢則幸訳

1977年7月2日。インドのマドラスからカナダのモントリオールへと出航した日本の貨物船ツシマ丸は太平洋上で嵐に巻き込まれ、あえなく沈没した。たった一艘しかない救命ボートに乗り助かったのは、動物たちをつれカナダへ移住する途中だったインドの動物園経営者の息子パイ・パテル16歳。ほかには後足を骨折したシマウマ、オラウータン、ハイエナ、そしてこの世で最も美しく危険な獣ベンガルトラのリチャード・パーカーが一緒だった。広大な海洋にぽつりと浮かぶ命の舟。残されたのはわずかな非常食と水。こうして1人と4頭の凄絶なサバイバル漂流が始まった…。生き残るのは誰か?そして待つ衝撃のラストシーン!!文学史上類を見ない出色の冒険小説。2002年度ブッカー賞受賞作。

素晴らしい!オバサンですが少年の気持ちで読み進め、頁をめくる手が止まりませんでした。
文字も大きく、厚みもそれほどでもないのですが、紙が薄く、見た目以上にボリュームのある内容です。主人公パイと一緒に、サバイバルに出発する気分で読み始めました。しかし冒頭は延々と宗教の話。いつ船は沈没するんだぁ~!と、もやもやしていると、いきなり船が沈没します。ここからは一気に読んじゃいました。一人と4頭が漂流すると本当にこんな感じかもと思わせる(そりゃ、実際にどうなるかは神のみぞ知るでしょう。)、その緊張感。自然の前に、一人の人間はまさに「点」でしかないのですよね。容赦なく、次から次へと迫る危機。知恵と勇気と忍耐で切り抜けるパイを、応援しながら読み進めました。
そしてラスト!「お見事!」としか言いようがないですね。とても楽しめた物語でした。満足です。
# by umekononikki | 2011-09-12 12:47 |

結婚できない男

結婚できない男_f0149664_853579.jpg結婚できない男
2009年 16話

出演:チ・ジニ、パク・ヒョンギュ、オム・ジョンファ、キム・ソウン他

日本での阿部寛主演の同名タイトルのドラマの韓国版。偏屈者の主人公は、結婚しないのではなく「できない」性格。果たしてそんな彼にも、恋のキューピットは微笑みかけてくれるのか?

日本のドラマは観ていません。ですから違和感なく観ることができました。チ・ジニ扮するジェヒは、ドラマの中で観ている限り、笑っちゃうくらい愛おしい。根はいい人なのですが、我が道を行こうとする傲慢さが、周囲との衝突を生みます。一方、オム・ジョンファ扮するムンジョンは、女医でそれなりの収入があるせいか、結婚にはどこか消極的。心から愛せる人との巡り合いを待っている、超受け身。そっかぁ、この2人が恋に落ちるのね~なんて思いながら視聴。毎回、ジェヒの偏屈ぶりに笑わされました。あの片方の口角を上げる、不敵な笑みが印象的。2人の台詞は核心的で、適齢期を過ぎた男女の心の内と、世間の目を表しています。一方、運命という偶然的な要素もある結婚ですが、それぞれの結婚できない要因も見え隠れし、ただのラブ・コメディに終わらない面白さがありました。また、2人を取り巻く人々も魅力的。同僚に隣人に家族。不器用な2人に、おせっかいなまでに手を出します。まぁ、そうでもしなきゃ、どうにもならない2人なのですけど。
結婚していない私には、少々耳が痛い台詞もあったりしましたが、とても楽しめたドラマでした。そうだなぁ、私はどちらかというと「ジェヒ」よりの性格かも。女でこの性格だと、男のジェヒ以上にたちが悪いかも・・・。しかもジェヒの様に、高収入じゃない。ああ、性格変えて、他人を受け入れよう・・・。いやー、無理無理!!!
なにはともあれ、末永くお幸せに♪
# by umekononikki | 2011-09-09 08:54 | 韓国ドラマ

大統領の最後の恋

大統領の最後の恋_f0149664_9133022.jpg大統領の最後の恋
アンドレイ・クルコフ著
前田和泉訳

セルゲイ・ブーニンは孤独だった。22歳で結婚に破れて以来、どの恋にも空しさと悲哀がつきまとう。ソ連崩壊後、政治の世界に足を踏み入れ、遂に大統領にまで昇りつめたが、真の愛は手に入らない。だが、政敵との闘いの日々、移植手術を受けた彼の心臓の「持ち主」と名のる謎の女性が現れると、運命は過去と交錯し、大きく動き始める。

この厚みに躊躇していた本。「ペンギンの憂鬱」を読み、この作家に興味があったものの、およそ5センチあるよ~。読書の年間目標100冊(遅読なので。)をクリア出来そうなので、手にとってみました。
「ペンギンの憂鬱」同様、淡々とした語り口がいい。何か事件が起きていそうな雰囲気と、何が事件なのか見えてこない楽しみ。大統領の人生の3つのポイントが同時進行しつつ、それぞれの年代で様々な事件が起こることも楽しい。年齢により大統領という同一人物の様々な面を覗けることも、これまた面白い。深刻な事態もどこかユーモラスに語られ、気がつけばラストへ突入。とても楽しめました。
人生には必ず岐路があり、その時どの道を選ぶかで人生が変わるのかとも思い、また、どの道を選んでも分相応な結末しか用意されていないとも思います。今、岐路に立たされている私としては、後者の方を心配し1歩を踏み出せないでいる状態。訳者の解説にもあった通り、3つの時系列はどこかリンクし、同じことを繰り返しているような雰囲気を感じます。しかし大統領は最後には「幸せ」を掴んだではないかと、自分を奮い立たせてみたりしています。どこか投げやりな青年から副大統領になり、最後には大統領にまで昇り詰める、社会的には階段を上り続けた人生。しかし「幸福」は、何故か彼の手からこぼれおちてしまいます。そんな大統領が掴んだ「幸福」は、何にも勝る価値があるのかもしれません。私も頑張らねばと思い、本を閉じました。
# by umekononikki | 2011-09-08 09:13 |